現代美術用語辞典 1.0

ソフト・スカルプチュア

Soft Sculpture
2009年01月15日掲載

石や木、ブロンズといった伝統的な「固い」彫刻の素材に対して、布や糸のような繊維素材、さらにはゴムや脂肪といった可変性のある「柔らかい」素材を用いた彫刻ないし立体作品を指す。また、こうした素材から結果的に固定した形態を持たない作品をも総括して「ソフト・アート」という。ソフト・スカルプチュアの先駆例は20世紀初頭のダダシュルレアリストオブジェ(M・オッペンハイムの毛皮を巻いた茶器《オブジェ》[1932]など)にまで見出しうるが、現代美術における主要動向としてのソフト・アートは1962年のC・オルデンバーグの個展に始まるとされる。ビニールや布で作られた巨大な日常品が重力によって歪む様が現実の変容とそのプロセスを芸術化したのである。クリストの梱包芸術やJ・ボイスの脂肪彫刻、R・モリスのフェルト彫刻など、ソフト・スカルプチュア/アートはプロセス・アートと交錯しながらすでに60年代には素材・形態共に多様化しているが、表現の多様性が普遍的となった現在ではソフト・スカルプチュアというタームで素材としての柔性を語ることは稀であり、モードや身体性といった視点で検討されることが多い。

[執筆者:三本松倫代]

現代美術用語辞典 2.0

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