現代美術用語辞典 1.0
「ツァイトガイスト」展
Zeitgeist
2009年01月15日掲載
1982年にベルリンのマルティン・グロピウス・バウ(旧美術工芸美術館)で開催された欧米の作家45名、200余点からなる大型企画展。前年にロンドンのロイヤル・アカデミーで新表現主義の総括的展覧会「絵画における新しい精神」を行なったキュレーターのC・M・ヨアヒミデスとN・ローゼンタールは、芸術におけるヴィジョン・神話・主観性の復興を「時代精神(ツァイトガイスト)」の現われであるとして、J・インメンドルフやF・クレメンテといった同時代の新表現主義、トランスアヴァンギャルディアの作品を絵画から彫刻やインスタレーション作品へと拡大して展示した。同時に、この精神性の先駆けと再解釈されたA・ウォーホル、C・トゥオンブリー、J・ボイスらの作品を併置して新表現主義の全方位性を概観している。同展の特色はさらに会場設定に表われる。第二次大戦による損壊以来81年の改修まで放置され、正面をベルリンの壁によって塞がれていた旧美術工芸館は、プロイセン文化の象徴と同時に歴史と現在の対照の場でもあった。同会場への現代美術の展示は、独の新表現主義興隆が第二次大戦以降否定されてきた自国文化に対し、敢えて戦前の手法を踏襲したものであることを象徴するとともに、同地がベルリン・アヴァンギャルド以来の世界的現代美術スポットとして復活する先駆けとなったのである。 参考文献:ZEITGEIST(exh. cat.), (ed.) Christos M. Joachimides, Norman Rosenthal, Martin-Gropius-Bau, 1982.
[執筆者:三本松倫代]