現代美術用語辞典 1.0
「ハイ・アンド・ロウ――近代美術と大衆文化」展
High & Low: Modern Art and Popular Culture
2009年01月15日掲載
1990-91年にMoMAのK・ヴァルネドーとA・ゴプニックが企画・開催し、91年シカゴのアート・インスティテュートとロサンゼルス現代美術館を巡回。言葉(キュビスム、構成主義、K・シュヴィッタース等/以下各項目の主なアーティスト)、グラフィティ(C・トゥオンブリー、A・タピエス、M・デュシャン)、カリカチュア(J・デュビュッフェ、P・ピカソ、C・ブランクーシ)、漫画(J・ミロ、R・リキテンシュタイン、P・ガストン)、広告(M・デュシャン、J・ジョーンズ、C・オルデンバーグ)といった項目を掲げて、古代(カリカチュア・グラフィティ)から近現代(マスメディアと商業広告)にわたる都市的大衆文化のなかに表われたさまざまな文字・図像イメージと、近代美術における表現との形式的な類縁性を取り上げて比較し、芸術家が同時代性の表現、ないしその試行として身の回りのイメージを取り込み、そうした作品が発表されることで鑑賞者(社会)の芸術概念が変容してきたという循環の図式を提示した。また、マスメディア的状況そのものを提示するという、形式だけでなく内容へと変容した70年代以降の大衆文化的表現の例としてJ・クーンズ、J・ホルツァー、C・シャーマンらの作品を検討している。なお、本展での大衆文化(ポピュラー・カルチャー)はあくまで視覚的伝達表現に留まり、ジャズや映画といった文化現象は考察の対象とはなっていない。 参考文献 :High & Low: Modern Art and Popular Culture(Exh.Cat.) The Museum of Modern Art, New York, 1990.
[執筆者:三本松倫代]