現代美術用語辞典 1.0
「パラレル・ヴィジョン」展
Parallel Visions: Modern Artists and Outsider Art
2009年01月15日掲載
1992年にロサンゼルス・カウンティ・ミュージアムが企画・主催し、93年にマドリッド、バーゼル、東京を巡回した、「アウトサイダー・アート」とそれらに影響を受けた20世紀の芸術家の展覧会。ロサンゼルス・カウンティ・ミュージアムは、抽象絵画に対する神秘体験の影響を考察した「芸術における霊的なもの――抽象絵画1890-1985」(1986)の続編として本展を企画した。キュレーターのM・タックマンは、ここでのアウトサイダー・アートを多くの場合独学の個人でしばしば精神障害を持つ「脅迫的幻視者」の作品と定義し、20世紀美術における大胆・素朴・具象的な表現はある程度こうした作品に影響されているという主張をP・クレーやM・エルンストが熱狂した精神科医H・プリンツホルンのコレクションやJ・デュビュッフェの「アール・ブリュット」(生の芸術)、あるいはA・ライナーのコレクションなどからの作品(症例)によって検討した。アウトサイダー・アート自体の展覧会は目新しいものではなく、また各巡回先によって若干の展示手法的差異はあったが(壁面の色分けや掲示順序等)同展に対する批評の多くは、「アウトサイド」と「インサイド」の作品の情動的芸術性といったものをほぼ同等に賞賛しながら、テーマと考察をあくまでもインサイドの作品(に見られる影響)にあてている点に向けられている。
[執筆者:三本松倫代]