現代美術用語辞典 1.0

291

291
2009年01月15日掲載

A・スティーグリッツがニューヨーク5番街291番地の屋根裏部屋に開いたギャラリー。写真家で出版も手がけていたスティーグリッツは、絵画に倣ったピクトリアリズムの写真を展示する場として、1905年に写真家エドワード・スタイケンとともに開設、1907年に展示対象を絵画にも広げた。当初はリトル・ギャラリー・オブ・フォト=ゼセッション(写真分離派)と名付けられていたが、所在地の番地にちなみ「291」と呼ばれるようになる。戦争下のヨーロッパから作品を搬送することが困難になり17年に閉廊するまで、アメリカ国内の美術家の援助を行なうと同時に、A・ロダン、H・マティス、F・ピカビア、C・ブランクーシらの作品を初めてアメリカに紹介する。15年、16年に『291』誌を発行。スティーグリッツ自身も実現に尽力したアーモリー・ショーとともに、ヨーロッパの前衛美術を知らしめる重要な役割を果たした。また、児童画や黒人芸術を取り上げた最初の主要な展覧会も行なった。このように、「291」は単なる画廊以上のものであり、M・ハートレーは「世界最大の小さな部屋」と呼んでいる。

[執筆者:垣田有香]

現代美術用語辞典 2.0

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