現代美術用語辞典 1.0
アーティスト・イン・レジデンス
Artist in Residence
2009年01月15日掲載
アーティストが一定期間滞在し、創作活動ができる施設や機関の名称。制作の支援やワークショップの実施、あるいは国際交流や文化振興など、施設によってその目的は多岐にわたる。欧米で1970年代に普及しはじめたこの制度は、今では「パトロン」の現代的形態としてすっかり定着し、多くのアーティストにとっては、有意義なスカラシップ・留学制度であると同時に、その滞在歴が展覧会歴や受賞歴と同様キャリアの評価基準という一面も持つようになった。一般には、民間企業が出資する施設が多くを占めるアメリカと地方自治体等の公的機関が活動の中心を担うヨーロッパという区分が成り立つが、運営の主体や形態もまたさまざまで、多数の応募が殺到する有名施設への滞在は当然のように難関である。遅ればせながら、日本でも最近になってこの事業に取り組む地方自治体が現われはじめたが、まだまだ絶対数に乏しく、また情報の公開も進んでいないため、助成が事情に精通した一部のアーティストに集中するなどの弊害が指摘されている。
[執筆者:暮沢剛巳]