現代美術用語辞典 1.0
アート・アンド・テクノロジー
Art and Technology
2009年01月15日掲載
広義には、オットー・ピーネが1957年デュッセルドルフに設立した「グループ・ゼロ」、1960年にパリで設立された「視覚芸術探求グループ」、ロバート・ラウシェンバーグらが1966年にニューヨークに設立した組織「E.A.T.」など、 1950年代末から1960年代にかけて相次いで生まれた、アートとテクノロジーの融合を目指すグループの活動を指し、キネティック・アートやライト・アートとの関連で語られることも多い。しかし、より限定された意味では、活動規模や期間の点で際立っていた「E.A.T.」の活動を指す。モダン・アートとテクノロジーの関係を遡れば、今世紀初頭の未来派、ダダ、ロシア構成主義に先例を見出せるが、戦前のこれらの運動におけるテクノロジーの扱いは、賞賛にせよ風刺にせよ、概して絵画、彫刻といった従来の美術表現の枠内での新たな題材の域を出るものではなかった。これに対して、冒頭に挙げた一連のグループは、電子テクノロジーに代表される当時の科学技術の発展を背景に、まったく新しい美術表現を、先端的な科学技術や工業製品そのものに求めようとした点が大きく異なる。こうした理念に基づいて制作された彼らの作品は、電子部品や工業的な素材を用いて、光、音、動きで観客を包み込むような空間を演出するという点に特徴があり、現代のインスタレーションやデジタル・アートに先鞭をつけたと言うことができる。
[執筆者:木戸英行]