2020年10月15日号
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現代美術用語辞典 1.0

サン=ジェルマン=デ=プレ

Saint-Germain-des-Prés
2009年01月15日掲載

パリ最古のサン=ジェルマン=デ=プレ修道院教会を中心とした、セーヌ川左岸第6区の地区。ソルボンヌ大学を中心とする第5区とともにカルチェ・ラタン(文教地区)とよばれ、書店・出版社・画廊が集まっている。この地区が文化的に最も華やかだったと言えるのは20世紀半ば、J・P・サルトルらが教会付近のオー・ドゥー・マゴ、フロールといったカフェで実存主義を唱えた頃である。それに連動するように次々と新しい芸術表現がサン=ジェルマン付近の画廊が擁する画家から生み出された。なかでも「アール・ブリュット」(J・デュビュッフェ/ジャンヌ・ブッシェー画廊)、「アンフォルメル」(A・タピエス、L・フォンタナ/スタッドラー画廊)、「オプ・アート」、「キネティック・アート」(V・ヴァザルリほか/ドゥニーズ・ルネ画廊)などが代表的である。また1962年には、クリストがボザール(国立美術学校)付近のヴィスコンティ通りを約200個のドラム缶を積み上げることで3時間近く封鎖し、一躍脚光を浴びた。70年代初頭に右岸のボーブール通りにポンピドゥー・センターが設立される計画が本格化すると、左岸から大挙して画廊がボーブール地区へと移転し、一時的に芸術の求心力を右岸に奪われた感があった。しかし大手の画廊が集まる右岸のボーブール地区に対して、既存の価値への反抗精神を培った左岸の中心地として、サン=ジェルマン=デ=プレの画廊群は現在でもその重要性を失っていない。

[執筆者:岸弥生]

現代美術用語辞典 2.0

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