現代美術用語辞典 1.0

オブセッション

Obsession
2009年01月15日掲載

「妄想、強迫観念」の意味。古くは悪魔や悪霊による「憑依」の意味ももつが、現代では「時に不合理とわかっていながらある考えや感情がしつこく浮かんできたり、不安なほど気掛かりになること」という精神医学・心理学的な精神の乱れを指す。「オブセッション」が芸術のタームとなったのは近現代、特にプリミティヴィズム以降の西欧美術において精神病者の作品(アウトサイダー・アート)が注目を集めたことによる。アウトサイダー・アートにおけるオブセッションは主として、精神分裂症の典型例である「空間恐怖 horror vacui」感(空間が音やイメージで満たされることを求める)と結びつき、宗教・政治等それぞれのオブセッションのモチーフで絵画平面を埋め尽くすが、こうした作品はJ・デュビュッフェが「生の美術 Art Brut」と表現したように、通常未昇華の表現とされている。これに対し、現代美術における「オブセッション」ないし「オブセッショナルなもの」は、昇華され、洗練された形で作品化される作家の内なる創造の源泉とみなされる。「オブセッション・アート」などと括られている場合には、前者の例か、草間彌生のようにオブセッショナルな表現が特に顕著な現代美術を指す例が考えられる。

[執筆者:三本松倫代]

現代美術用語辞典 2.0

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