現代美術用語辞典 1.0

ジェミナイG.E.L.

Gemini G.E.L.
2009年01月15日掲載

マスタープリンター、ケネス・タイラーが1965年にロサンゼルスのメルローズ・アヴェニューに設立した版画工房。最初は、ジェミナイLtd.としてスタートしたが、翌年、シドニー・フェルゼンとスタンリー・グリンスタインという共同経営者を得て、工房をジェミナイG.E.L.(グラフィック・エディションズ・リミテッド)へと改組。J・アルバースをはじめとして、D・ホックニー、J・ジョーンズ、R・ラウシェンバーグ、R・リキテンスタイン、C・オルデンバーグ、F・ステラなどの人気作家による野心作を次々と出版し、1960年代から70年代初頭にかけてのプリント・リバイバルの時代に中心的な役割を演じた。同工房の特徴は、伝統的な技法に止まらず、工業的な素材や新しい技法を大胆に導入し版画制作の可能性を拡大したことにある。複数の版種を併用するミクスト・メディアや、マルティプルの立体作品などを積極的に制作し、版画制作を従来のアルチザン的な性格から、大規模なプロジェクトへと向かわせた。代表的な作品は、ラウシェンバーグの《ブースターと7つの習作》(1967)、ジョーンズ《黒の数字シリーズ》、《色数字シリーズ》(1968/69)、ステラ《版画アルバム・シリーズ》(1967-74)、リキテンスタイン《大聖堂》、《積み藁》シリーズ(1969)など。なお、ワシントン・ナショナル・ギャラリーは、同工房が出版した全作品を網羅する、ジェミナイ・アーカイヴを所蔵している。

[執筆者:木戸英行]

現代美術用語辞典 2.0

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