現代美術用語辞典 1.0
アーモリー・ショー
Armory Show
2009年01月15日掲載
1913年ニューヨークで開かれた「国際現代美術」展(2月17日-3月15日)の通称。レキシントン街にある第69連隊の兵器庫(Armory)で行なわれたため、この名で呼ばれる。展覧会を組織したのは、「ナショナル・アカデミー・オブ・デザイン」に異議を唱えるかたちで12年に創立された、「ジ・エイト」のメンバーであったA・B・デイヴィスを会長とする「アメリカ画家彫刻家協会」。協会は、それまでの現代アメリカ芸術の展覧会よりも、より包括的で大きなものを企画し、またそれは同時期のヨーロッパ芸術と照らし合わされるべきであるとの考えから、12年ヨーロッパでの調査旅行を行なった。そして、当地でデュシャン兄弟を含めたパリのアヴァンギャルドの作家たちや画商ヴォラールと出会い、このことが「アーモリー・ショー」の性格をより明確にした。「アーモリー・ショー」では全体で約1600点もの作品が展示されたが、そのうちの3分の2はアメリカ人による作品、残りの約500点余りがJ=A・D・アングル、E・ドラクロワからH・ドーミエ、C・コローを経てÉ・マネへと至るフランス芸術の流れや象徴派、そしてより新しい動向であるキュビスムや後期印象派、フォーヴィスムといったヨーロッパの作品である。なかでもデュシャンの《階段を降りる裸体 No.2》は論争を起こすほどの話題となった。アメリカの批評界における「モダン・アート」の語に肯定的な意味を与えるほどまでに影響力の大きかった展覧会である。
[執筆者:保坂健二朗]