現代美術用語辞典 1.0

シカゴ・イマジズム

Chicago Imagism
2009年01月15日掲載

1960年代後半から70年代半ばまでアメリカ・シカゴを中心に活動したグループ。R・ヨシダ、J・ナット、R・ブラウンらアート・インスティテュート・オブ・シカゴの学生・卒業生を中心として形成された。漫画的な平面性と猥雑かつ皮肉なイメージを形式的特徴とするが、アール・ブリュット(生の芸術)への傾倒こそこのグループ最大の特徴だろう。J・デュビュッフェが1951年シカゴで講演を行ないアール・ブリュットを紹介したことから、シカゴにはアール・ブリュット作品を積極的に評価する地盤が存在していた。その結果J・E・ヨアクムやM・ラミレスといった幻視者の作品がこのグループのイコンとなったのである。彼ら二人のスタイルをそのまま応用した作品(J・ナット、R・ブラウン)さえ存在するが、このアール・ブリュットへの傾倒は決してイメージの新奇さのみを求めたものではない。この傾倒の背後には、モダニズム美術の牙城と化していたニューヨークへの強い反発があった。J・デュビュッフェと同じく彼らは、モダニズムという美術制度の外に目を向けることで、この制度に挑戦したのである。1972年の「1972 シカゴ・イマジズム・アート」展(アメリカ)とヴェネツィア・ビエンナーレが、このグループを世界的に認識させることとなった。アール・ブリュットが見直されている現在、彼らの活動を再評価する気運が高まっている。

[執筆者:苅谷洋介]

現代美術用語辞典 2.0

▲ページの先頭へ