現代美術用語辞典 1.0
アトリエ17
Atelier 17
2009年01月15日掲載
イギリス人の画家・版画家のスタンレー・ウィリアム・ヘイターが1933年、パリに設立した銅版画工房。工房名は所在地の番地に由来する。ヘイターはここで実験的な版画制作を行ないながら、当時の前衛的な画家たちが自由に集える場として工房の門戸を広く開放しており、P・ピカソ、W・カンディンスキー、M・シャガールなどのほか、M・エルンスト、J・ミロ、Y・タンギー、R・マッタ、A・マッソンなどシュルレアリストが集まったことで知られる。工房は第二次世界大戦の戦禍を逃れるために1939年に閉鎖され、翌年ニューヨークに移って再開されたが、ここも同時期にパリから逃れてきたエルンスト、マッタ、マッソンらが集う場所となった。当時まだ新しいアメリカ美術の可能性を模索中だったW・デ・クーニング、J・ポロック、M・ロスコなどアメリカ抽象表現主義の主要な作家たちは彼らから多大な影響を受け、シュルレアリスムと抽象表現主義の関係を考える上では欠かせない存在となった。
[執筆者:木戸英行]