現代美術用語辞典 1.0
シャンブル・ダミ(友達の部屋)展
Chambre d'Ami
2009年01月15日掲載
1975年ベルギー、ゲント現代美術館館長に就任したヤン・フートが、86年、アーティストを市内54カ所の一般住宅に送り込み、家そのものを展示会場にした。B・ナウマンによる《グッド・ガール――バッド・ガール/グッド・ボーイ――バッド・ボーイ》のヴィデオ・インスタレーションなど、アーティストは住宅の中に向かう一方、訪問者にも語りかけ、住人とアーティスト、鑑賞者との相互作用を創り出した。室内に御影石とガラスの巨大なテーブルを設置し、厳しい自然を進入させたM・メルツ、子供がへその緒のような長い布と遊ぶパフォーマンスの形跡を作品にしたL・ファブロ、刷毛を壁面に押しつけて連続した正方形を描き、室内に静謐さをつくり上げたN・トローニー。その他、C・ボルタンスキー、D・ビュレンヌ、D・グラハム、J・コスース、J・クネリス、S・ルウィット、J・パオリーニ、B・ラビエなど欧米の作家を中心に51名が参加。美術館や画廊という隔離された場で行なわれてきた展覧会を社会のなかに置き直し、現代美術が従来の回路の外側でも機能しうることを提示した。本展によりフート自身、国際的な脚光を浴びる。92年、フートがディレクターを務めるドクメンタ9のノイエガレリーでは、片瀬和夫など数名のアーティストに現存のコレクション内での制作を依頼し、「シャンブル・ダミ」展出展作品が再現された。
[執筆者:柴田勢津子]