現代美術用語辞典 1.0
マティス回顧展
Henri Matisse
2009年01月15日掲載
1951年にニューヨーク近代美術館で開催された、フランス人画家アンリ・マティス(1869-1954)の大規模な回顧展。開催に際して、館長アルフレッド・バーJrが、展覧会カタログとともに、マティスに関する初の重要なモノグラフ『Matisse, His Art and His Public』を上梓したことでも知られる。どちらの表紙も1940年代から製作されていたマティスの切紙作品によって飾られた。このときの浩瀚な記念碑的モノグラフはマティスの基本文献としての地位を今日でもなお失っていない。印象派の自然主義的な様式からフォーヴィズムを経て抽象絵画へ向かう絶え間ない革新という、いわゆるモダニズムの文脈に立ったバーのマティス解釈は、ひとつの規範としてその後の画家の評価に大きな影響力を及ぼした。バーの解釈はクレメント・グリンバーグのフォーマリズム批評のなかでさらに展開され、モダニストとしてのマティスの評価は確かなものとなっていく。
[執筆者:陳岡めぐみ]