現代美術用語辞典 1.0
ミニアチュール
Miniature
2009年01月15日掲載
原義はラテン語のminiare(ミニウムをもって彩色すること)の意。ミニウム(minium)とは写本の挿し絵を描くのに用いる赤い絵の具(鉛丹)のことである。 この言葉は二つの異なる意味を有するようになった。第一義は写本を飾る彩色画もしくは素描のことである。17世紀以来、この語がmignon(小さな)という語と結びつけられたため、語源が誤って解釈され、あらゆる種類の細密画を意味するようになった。 第二義は、15世紀末頃フランスに現われた記念贈答用の小型絵画を指す。フランドルの芸術家、ホレンブーツ家がイギリスで芸術としての地位を確立させたと考えられている。16世紀、ホルバインがさらに細緻で優れた作品を生みだした。16世紀末にはアクセサリーとして使用されることが一般的となり、形も円から楕円形に変化し、枠は宝石で飾られるようになった。こうしてミニアチュールはエリザベス朝のニコラス・ヒリヤードの作品において最盛期を迎えることとなる。アイザック・オリバーがヒリヤードの後を引き継いだ。しかしサミュエル・クーパー以後、傑出したミニアチュールを制作する者は出ず、衰退を始める。18世紀中頃、ロココ趣味の影響で再び人気が出た。作法はヴェラムの代わりに象牙の上に【色彩】を施すようになる。19世紀、ボーン家が過去の有名な絵画を小さなエナメル画化して人気を博したが、世紀半ばに【写真】が普及しはじめるとミニアチュールは急速に衰退していった。
[執筆者:山口美果]