現代美術用語辞典 1.0
ミュージック・コンクレート
Musique Concréte
2009年01月15日掲載
この名称はフランス語で「具体音楽」を意味する。レコード盤に記録されている音や自然環境の音など既成の音素材を取り入れ、電気的に加工を加えるなどして作品化する技法のこと。1948年パリのP・シェフェールを中心としたグループが、《騒音の音楽》をラジオ放送したことに始まる。すでに第二次大戦前にイタリアの未来派やアメリカのJ・ケージが類似した試みを行なっていたが、P・シェフェールらは磁気テープを用いることで、より自由な音のコラージュ(サンプリング)を実現している。彼らの影響を受けフランスではO・メシアン、D・ミヨー、P・ブーレーズらが積極的にこの技法を取り入れた。一方同時期のドイツでは、K・シュトックハウゼンが「電子音楽」を実験的に制作しており、磁気テープを使用して電子音を加工する点においてP・シェフェールらと共通の志向を持っていた。現在ではミュージック・コンクレートと、ドイツに始まる電子音楽を広義の「電子音楽」として捉えている。またサンプリングといった技法は、ポピュラー音楽のジャンルにおいても70年代より積極的に用いられている。
[執筆者:苅谷洋介]