現代美術用語辞典 1.0

贋作

Fake
2009年01月15日掲載

先立つ作品の模写、模倣する作業は芸術家の修業のひとつとして広く行なわれてきたが、その行為に流通市場が介在し、虚偽性を持った場合に贋作と見なされる。ただし、この付帯条件には「悪意による」もののみならず、単なる作者誤認も含まれる。贋作は一度「本物」と認定されながらも真正ではないと判定された作品であり、美術鑑定士、あるいは美術館、博物館などの権威によって承認されたものの、その後贋作とされスキャンダルを巻き起こした例は枚挙に暇がない。19世紀には、ルーヴル美術館が高値で購入した贋作者バスティアーニによるルネサンス期の彫像に対して、彼の手になる作品を市場に出した画商自らが贋作と暴露しながら、美術館側は真作であると判定した例もある。今日、真贋の判定には、炭素14法や熱ルミニッセンス法などの年代測定や、X線などによる科学的検査も行なわれているが、科学的な判定のみによって贋作が露顕する事は少なく、審美的、歴史学的な判断がそれらに先んじることが多い。贋作者の力量が優れている場合には、逆説的ながら贋作もオリジナリティを持ちうることとなり、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館には贋作のみを展示した一室もある。日本でも、2001年に「真贋のはざま」展(東京大学総合研究博物館)が開催された。 贋作は時代の流行と需要に応じた極めて社会的な生産物であり、今日では偽ブランド商品や偽造通貨が問題となっている。

[執筆者:柴田勢津子]

現代美術用語辞典 2.0

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