現代美術用語辞典 1.0
企画展
Loan Object Exhibition
2009年01月15日掲載
美術館が自らの所蔵品を展示する展覧会を常設展と呼ぶが、それに対してよそから借り受けたコレクションによって構成される展覧会を企画展と呼び、広義にはデパートの催事場などで開催される展覧会も、すべて企画展に含められる。日本の近代美術館における初の企画展は、1951年11月に神奈川県立近代美術館のこけら落としとして開催された「セザンヌ、ルノアール」展だが、同館を始祖とする「鎌倉方式」と呼ばれる企画展中心の事業形態は、その後全国の公立美術館へと広まっていった。この事業形態には、新聞社などメディアとのタイアップが容易で話題性・集客力に富み、美術館相互のネットワークを緊密にする半面、常設コレクションや教育普及など、他の活動がおろそかになってしまうなど一長一短が指摘されている。企画展といえば、従来は前述の「セザンヌ、ルノワール」展のごとく特定の作家や流派の作品を一同に集める形態が圧倒的多数を占めていたが、最近では担当学芸員が固有のテーマを設定し、それに即した多くの作家の作品を展示する「テーマ展」が増加傾向にある。ちなみに、コレクションを一切有さず、企画展のみによって運営される美術館をドイツ語でクンストハレと呼び、日本にも少数ながら「水戸芸術館」などの例が挙げられよう。最近の「テーマ」展の隆盛は、このようなクンストハレ型美術館の精力的な活動と密接に関連している。
[執筆者:暮沢剛巳]