現代美術用語辞典 1.0
総合主義
Synthetism
2009年01月15日掲載
19世紀末のフランス象徴主義の動きのなかで、ゴーギャンを中心に実践された絵画の様式。言葉そのものは、1889年にパリのカフェ・ヴォルピニでゴーギャンとエミール・シュフェネッケルが開催した「印象主義および総合主義グループの絵画」展で生まれたものだが、その技法と理論は、ゴーギャンはじめベルナール、セリュジエらポン=タヴァン派の画家、ナビ派の画家たちによって試行されていたと言える。彼らの主張によれば、芸術は三つの要素 ――自然形態の外観、主題に対する画家自らの感覚、線・色彩・形態についての美学的な考察――を「総合」しなければならなかった。この「総合」の理念は、一種の写実主義である印象派が色彩分割によって解体した自然描写に対する反動だった。彼らは画家の主観と外界とを、明快な造形表現を用いて統合しようとしたのであり、濃淡のない平坦な色面をくっきりとした太い輪郭線で取り囲むクロワソニスムは、そのような総合主義の理想にぴったり適合する手法であった。この絵画様式は、「絵画はその本質において、ある秩序にもとづく色彩で覆われた平坦な面である」とするドニの有名な宣言に結実する。内面と外界の総合、合理的な思考と感覚の総合、観念的な主題と造形表現の総合を強く打ち出した点で、総合主義の主張は、続く20世紀が辿っていく抽象絵画の流れのひとつの根幹となった。
[執筆者:坂本恭子]