現代美術用語辞典 1.0
ミュゼオロジー
Muséology
2009年01月15日掲載
博物館、美術館を運営するための思想的、実践的諸理論。美術館を構成する全般的枠組みに関しては美術史、コレクション形成、美学研究や、個人収集から公共コレクションへといった変遷を辿った美術館の誕生に絡むデモクラシーの問題、展示の方法論などが関係し、また作品の調査、保存、修復には科学的研究、文化財保護のための環境整備などの技術的問題が関わる。実際的な美術館運営と管理に関しては、まず各館の事業形態、作品の著作権などが「博物館法」「文化財保護法」「博物館法施行規則」「公立博物館の設置及び運営に関する基準」によって法的に規定され、その他民法をはじめ各種税法や建築関係、消防法なども間接的に関係する。また経営面では各館に適したミュージアム・マネージメントのスキルが要求される。
以上のような、文化財の保護、展示を主目的とする伝統的美術館の運営に加えて、美術教育・普及活動や美術館のアミューズメント機能が新たに重視されるにつれ、パブリシティやアウトリーチの充実のためのプログラムも組まれるようになる。 現在の美術館運営では、このような教育活動やマネージメントに重点が置かれる傾向にあるが、厳しい経済状況下において、もはや美術館はその権威のみで存続することが困難となり、館の個性化やパブリックなアウトリーチそのものがその生き残りにかかっているという実情も関与している。
さらに日本では1996年に橋本内閣によって国立博物館、美術館の独立行政法人化が審議されはじめ、その内実の不透明さに一部美術界から論議が巻き起こったが、この問題に関する一般的な無関心をも含めて、今後の日本のミュゼオロジーを巡る議論の的になっていくと思われる。
[執筆者:宮川暁子]