現代美術用語辞典 1.0
ダニエル=ヘンリー・カーンワイラー
Daniel Henry Kahnweiler
2009年01月15日掲載
ドイツ出身のパリの画商、美術評論家。1902年にパリに移住し、1907年にヴィニョン街28番に最初の画廊を開いた。このとき20代前半であった。以後ユダヤ系ドイツ人であるということもあってコレクションの没収や避難を余儀なくされた2度の大戦を経つつも、若く新しい芸術家を経済面でも理論面でも支援しつづけた。「ピカソの画商」の異名をもつようにP・ピカソとの関係は深いが、G・ブラックやJ・グリス、あるいはフォーヴィスムの作家たちであるドランやヴラマンクをも支援しており、彼が1908年に開いたブラックの個展は、カーンワイラーにとって最初の個展であったと同時にキュビスムの作家の個展としても最初のものであった。同展にヴォークセルがよせた展評が「キュビスム」という呼称のもととなる「キューブ」という言葉を生んだ、という説もある重要な展覧会だった。以後ブラック、ピカソらキュビストの作品は専らカーンワイラーの扱うところとなる。美術評論家、あるいは編集者としても活躍し、数多い著作のうち日本語で読めるものには『キュビスムへの道』(千足伸行訳、鹿島研究所出版会、1970)、『わたしの画廊わたしの画家』(瀬木慎一+松尾国彦共訳、大阪フォルム画廊出版部、1974)がある。
[執筆者:浅沼敬子]