現代美術用語辞典 1.0
メゾチント
Mezzotint
2009年01月15日掲載
版画技法用語で金属凹版の技法の一種。ユトレヒトのルートヴィヒ・フォン・ジーゲンがその発明者と言われ、最初のメゾチント作品は1642年に制作された。その後、とりわけ絵画作品の複製によく使われた。
現在のこの技法の一般的な過程はまず、ロッカーという先端に櫛のような細かい刻みを持つ、弧を描く刃のついた平たい道具で版の表面全体に、縦、横、斜めと細かいまくれを作る。そして、スクレーパーやバーニッシャーという金属のヘラやコテで、そのまくれを取り除いたり、平滑になるまで磨いたりする。その後、版にインクをのせ、拭き取る。削る度合いや磨き方を加減することで、さまざまな段階の明暗の調子が得られる。この段階的な濃淡と、黒の深みがこの技法による効果の特徴である。
19世紀にはほとんど使われない時期もあったが、今世紀に入ってメゾチントの芸術性が認められるようになった。この技法を用いた代表的な版画家には、長谷川潔(1891-1980)やカラー・メゾチントの新たな技法を考案した浜口陽三(1927-)が挙げられるだろう。
[執筆者:三上真理子]