現代美術用語辞典 1.0

メディウム

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2009年01月15日掲載

この用語には二つの意味がある。ひとつは絵の具を作るために 顔料と混ぜる溶剤のことで、展色剤(vechicle)と同じ意味で用いられる。素材は絵の具の種類によってさまざまである。例えば油絵の具の場合は乾性油が、水彩絵の具の場合はゴムと水が用いられる。第二義としては例えば絵の具、大理石、コンクリートなど美術作品の制作材料として用いられる物質のことを指す。硬い大理石から柔らかい肉体や薄衣を掘り出すように、芸術家はこの限られたメディウムの範囲内で自己の技術を最大限にいかし表現せねばねらない。19世紀の後半に 純粋主義(purism)が起こった。建築から始まったこの様式はやがて20世紀になると美術の全領域に広がっていった。この考えを極限まで推し進めていくと、メディウムはそれに適合する特定の形態が定められることになる。例えば石造彫刻には量塊性に富んだ荘重な形態がふさわしいというような考え方である。P・モンドリアン、H・ムーアなどの作品は、このような限定的な思考から創造性が刺激されて生まれてきたものであると言える。しかし、ヘンリー・ムーア自身がその危険性を指摘しているように、材質に対する忠実さだけでは芸術作品は生まれない。

[執筆者:山口美果]

現代美術用語辞典 2.0

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