現代美術用語辞典 1.0

メルツバウ

Merzbau
2009年01月15日掲載

ドイツ、ハノーファーのダダイスト、K・シュヴィッタースが1920年代より継続して制作した建築的構成物。シュヴィッタースは一貫して、自らの芸術を「メルツ(Merz)」という言葉で呼んでいる。この言葉は、19年に偶然彼が自らのコラージュ作品中に見出したもので、ドイツ語としては無意味である。ただし、後にシュヴィッタース自身はドイツ語のausmerzen(除去する、削除する)に由来する言葉、と位置づけている。この「メルツ」と呼ばれた作品群は、具体的には街路で拾ったゴミをコラージュしたもので、伝統的な素材・技法を破壊すべく制作された。《メルツバウ》(メルツ建築を意味する)はこの「メルツ」作品のなかでは最も規模が大きく、シュヴィッタースの自宅内部にゴミや石膏による立体幾何形態を所狭しと設置したものである。室内に置かれた無数のオブジェは、その一つひとつが構成主義の芸術家たちに捧げられていた。シュビッタースは休むことなくこの作品を作り続けたが、ハノーファーで制作した第1作(1923-)は爆撃で破壊され、ノルウェーに築いた第2作(1937-)は焼失、イギリスでの第3作(1945-)は未完成に終わった。第二次大戦後に使用されることになったアサンブラージュという用語は、主としてP・ピカソの作品とこのメルツバウから生まれたと言えるだろう。

[執筆者:苅谷洋介]

現代美術用語辞典 2.0

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