現代美術用語辞典 1.0
モンマルトル
Montmartre
2009年01月15日掲載
パリの北端18区にかかる、サクレ・クール寺院の眼下に広がる海抜130mの丘陵地。1860年にパリに統合されると、安い家賃とひなびた庶民街の風情に惹かれて画家、詩人、音楽家が集まるようになった。「印象派」から「フォーヴィズム」、「キュビスム」へと至る近代美術における新しい試みはこの地で育まれた。界隈の「カフェ・ゲルボア」ではE・マネを中心にE・ドガら印象派の画家たちが交流を持ち、A・ルノワール、V・v・ゴッホ、M・ユトリロ、トゥルーズ=ロートレックらもモンマルトルを拠点に各々の画風を追求した。ラヴィニャン街の「洗濯船(Le Bateau-Lavoir)」(詩人M・ジャコブによって名付けられた画家や詩人の集合アトリエ)にはA・モディリアーニ、M・D・ヴラマンク、A・ドランらが出入りし、その中心人物のひとりP・ピカソはここでキュビスムの宣告となる《アヴィニョンの娘たち》(1907)を描いた。しかし第一次世界大戦を境に急激に観光地化が進み、芸術家たちがこれを嫌って左岸のモンパルナスに移動した結果、モンマルトルはもはや芸術家村ではなくなってしまった。
[執筆者:岸弥生]