現代美術用語辞典 1.0
ドイツ工作連盟
Deutscher Werkbund
2009年01月15日掲載
ドイツの建築家H・ムテージウスが1907年ミュンヘンに結成した、「芸術と産業と職人技術の協力」を通じて工芸の「品位を高める」ことを目的とする団体。企業家・美術館長等のほか、初期の主要メンバーにJ・M・オルブリヒ、J・ホフマン、H・ペルツィヒ、P・ベーレンスなどの建築家・デザイナーがいる。プロイセンの貿易省美術工芸部主任であったムテージウスが芸術工業隆盛の19世紀末にアーツ・アンド・クラフツ運動を視察してドイツ国内の芸術アカデミーを改革したのち「経済と芸術の統合」に取り組んだ背景には、生活に関する反歴史主義的市民啓蒙と輸出振興のためのデザイン改革の要請、さらに民族主義の勃興といった多様な時代動向があった。こうして「質の高い仕事」による製品を求め各分野の協調を奨励した結果、機械化・規格化を推進したムテージウスと芸術的個性を求めるH・v・d・ヴェルデの間に1914年ケルンでの連盟博覧会以後対立関係が生ずる。v・d・ヴェルデが去った後、1927年シュトゥットガルトで開催された博覧会ではヴァイセンホフ・ジードルンクが規格化の成果を内外に示したが、機械化と技能、芸術性の共存という両者の統合的精神は、ムテージウスの下で働きv・d・ヴェルデを敬愛したW・グロピウス(1912年連盟加入)によるバウハウス(1919年設立)へと受け継がれる。なお連盟は1933年にナチによって解散させられ、1950年に再開している。
[執筆者:三本松倫代]