現代美術用語辞典 1.0
ドクメンタ
Documenta
2009年01月15日掲載
ドイツ中央部の工業都市カッセルで、4-5年ごとに行なわれる(1955/59/64/68/72/77/82/87/92/97)世界最大規模の現代美術の「ドキュメント」イヴェント。55年にナチスが退廃芸術として弾圧した近現代美術の再評価を目的としてカッセルの美術家・建築家アーノルト・ボーデを中心に連邦行事として初めて開催された。第2回より制作・運営を「ドクメンタ有限会社」が行ない、100日間の会期(6-10月)が定着する。また、第3回以降テーマ設定がなされ、第4回から参加が同時代の作家に限定された。 第5回のハラルド・ゼーマン以降、芸術総監督(第6、8回マンフレート・シュネッケンブルガー/第7回ルディ・フックスほか、コスジェ・ヴァン・ブリュッゲン、ジェルマーノ・チェラント、ヨハネス・ガヒナンク/第9回ヤン・フートほか、バート・デ・バール、ピエロ・ルイジ・タッツィ、デニス・ザカロプス/第10回カトリーヌ・ダヴィッド)の采配が注目と批評の大きな対象となる。 東独との国境に位置していたカッセルでの開催は、現代美術界における同時代性の指標であると同時に「西側社会の現代」美術の東側に対する示威イヴェントでもあった。冷戦が終了し、非西欧社会の作家を含んだ膨大すぎる情報量によって「動向」を見出し難い状態に陥った昨今のドクメンタは、その意義について再検討の時期にある。
[執筆者:三本松倫代]