現代美術用語辞典 1.0
フォルクヴァンク美術館
Museum Folkwang
2009年01月15日掲載
ベルリン、フランクフルトと並んで、ドイツで最も早く近代美術部門が設置されたルール地方エッセンの美術館。1906年の創設時はハーゲンの個人収集家K・E・オストハウスによる個人美術館であり(美神フレイヤの間を意味する館名は工業地帯ルール地方の文化拠点を目指して古アイルランド文学エッダより付けられた)、「美術を生活に引き戻すという時代の課題を美術館は請け負わねばならない」というオストハウスの意識が、H・v・d・ヴェルデの招聘(美術館建築)とポスト印象派、表現主義の優れたコレクション形成をもたらした。彼の死後1922年にエッセンの市立美術館に統合され、館長E・ゴーゼブルフの下、ロマン主義やデア・シュトルム等の近代ドイツ美術の収集拡大を進めていたが、37年の「退廃芸術」押収によりコレクションは散逸し、建物も爆撃を受ける。1954年に復興を開始し、1960年の新館開館後はコレクションの回復と同時にシュルレアリスムや抽象表現主義等国際的な美術動向を取り込む。さらにエッセンの写真家・教師O・シュタイネルト寄贈の写真コレクション、エッセン歴史博物館、ルールラント美術館を統合し、1983、98年と2回の改築後総合的芸術文化施設としての発展を遂げている。
[執筆者:三本松倫代]