現代美術用語辞典 1.0
ユニバーサル・リミテッド・アート・エディションズ(ULAE)
Universal Limited Art Editions
2009年01月15日掲載
1957年にタチアナ・グロスマンによってニューヨーク州ロングアイランド、ウェスト・アイスリップに設立された、アメリカ現代版画を代表する工房のひとつ。タチアナ・グロスマン自身は版画技術者ではなかったが、心臓に持病のあった画家の夫に代わって家計を支えるために、プリンターにロバート・ブラックバーンを招き版画の制作・出版をはじめた。プリンターはその後、ジグモンド・プリード、ビル・ゴールドストンと変わり、グロスマンが1982年に世を去った後はゴールドストンが工房を率いている。ULAEが最初に手がけた作品は、L・リヴァースと詩人のフランク・オハラによるポートフォリオ《石版画集》。その後、S・フランシス、J・ジョーンズ、R・マザーウェル、R・ラウシェンバーグ、J・ダインなどの作品を発表し、1960年代のプリント・リバイバルに先鞭をつけた。とくに、ジョーンズとラウシェンバーグをアメリカ現代版画を代表する作家に育て上げたことは有名。近年は、T・ウィンターズ、S・ローゼンバーグ、K・スミスなどとのコラボレーションが多い。ニューヨーク近代美術館には、グロスマンの功績を称えて、彼女の名を冠したギャラリーとULAEのアーカイヴ・コレクションがある。
[執筆者:木戸英行]