現代美術用語辞典 1.0
ドリッピング
Dripping
2009年01月15日掲載
床に置いたキャンヴァスの上に絵の具を染み込ませた絵筆をかざし、絵の具を画面に塗布することなくその飛沫を散らして着色する技法。「抽象表現主義」の最中、J・ポロックが開発したこの技法は、キャンヴァスをイーゼルや壁に立てかけて絵の具を塗布する従来の“常識”を覆し、またいわゆるストロークによっては決して得られない表現を可能にした画期的なものであった。G・マチューの「タシスム」やH・フランケンサーラーの「ステイニング」などの技法は、いずれもこの「ドリッピング」に触発されて生まれたものであり、またキャンヴァスを床に置く発想はその後の「シェイプト・キャンヴァス」へと連なっていく。一時期、これらの技法は「アクション・ペインティング」という総称で知られていたが、この総称は技法というよりは、作家の行為・制作プロセスと呼ぶべき概念であり、現在それは「アクショニズム」というより大きな単位のなかへと還元されている。
[執筆者:暮沢剛巳]