現代美術用語辞典 1.0
実験工房
Experimental Workshop
2009年01月15日掲載
1951年に結成された芸術運動で、そもそもは同年に日本橋高島屋にて開催されたピカソ展の前夜祭という性格をもっていた。山口勝弘、北代省三、福島秀子、秋山邦晴といったメンバー構成からも、美術、音楽、文学といった各ジャンルを越境する総合芸術の意図が窺われるが、翌52年の第2回公演以降、その活動はO・メシアン、L・バーンスタイン、A・シェーンベルクの演奏など音楽を中心とするようになり、55年まで毎年開催されたその公演は、日本における現代音楽の揺籃として重要な役割を果たした。音楽が中心であったとはいえ、それが美術との共同を絶えず試みていたのも特筆すべき点。この運動に関わった代表的人物はなんといっても武満徹だが、この運動のなかで批評家瀧口修造の知己を得た武満は、「実験工房」の発表会で《遮られない休息》などの傑作を発表、やがてその独特の旋律はI・ストラヴィンスキーに絶賛されたのを機に広く世界的な注目を集めるようになる。
[執筆者:暮沢剛巳]