現代美術用語辞典 1.0
プリント・リバイバル/プリント・ルネサンス
Print Revival / Print Renaissance
2009年01月15日掲載
日本やヨーロッパと異なり版画に関する伝統をもたないアメリカ美術の場合、1950年代以前は、版画は絵画に付随する二次的なメディアとしか認識されていなかった。しかし、1960年代から70年代初頭にかけて、主としてポップ・アートやコンセプチュアル・アートの作家たちが、新聞雑誌などマスメディアからとったイメージを直接的に画面に持ち込む手段として、写真製版による複写の技術を利用できる版画制作に注目し、さまざな実験的な作品を制作し始めた。これに呼応するようにアート・ディーラーたちも、当時のアメリカの急速な経済発展を背景に新しく美術市場に参入してきた新興コレクターたちの恰好の蒐集対象として、こうしたアーティストたちの版画制作をサポートし、アメリカにおける版画制作は出版点数の点でも、質の点でも、一躍非常な活況を呈するようになった。このムーヴメントをプリント・リバイバル(版画復興)、もしくはプリント・ルネサンスと呼ぶ。また、1957年設立のユニバーサル・リミテッド・アート・エディションズ(ULAE)、1960年設立のタマリンド・リトグラフィ工房、1965年設立のジェミナイG.E.L.、1974年設立のタイラー・グラフィックスLtd.など、当時あいついで設立された版画工房の存在はこの動向の中心的な役割を果たした。
[執筆者:木戸英行]