現代美術用語辞典 1.0
宿命反転都市
The City of Reversible Destiny
2009年01月15日掲載
荒川修作+マドリン・ギンズが現在東京都の臨海地区にて実現を目指している大規模な都市計画の総称。かつては《意味のメカニズム》に代表される一連のダイアグラム絵画作品を描いていた荒川は、その後建築・都市計画の問題へと深い関心を寄せるようになり、1990年代以降は岡山の奈義町現代美術館における《展示室『太陽』――遍在の場・奈義の龍安寺・建築的身体》(1992-94 )や《養老天命反転地》(1995)など、大規模な環境と身体の実験を試みてきた。今回の《宿命反転都市》は、臨海地区の埋め立て地に巨大な集合住宅を建設し、また築地の魚市場を全面的に再構築しようとするもので、「新しい日本の風景を建設し、常識を変え、日常の生活空間を創り出すために」というその壮大な意図は、荒川+ギンズの建築プロジェクトの集大成的な意味合いを持っているが、予算的・技術的な困難が多大で、今のところ実現の目処は立っていない。なお、このプロジェクト案は、大型の模型やCG画面などを交えた展示として、グッゲンハイム美術館(1997)やICC(1998)の個展でも紹介された。
[執筆者:暮沢剛巳]