現代美術用語辞典 1.0

木版、ウッドカット

Woodcut
2009年01月15日掲載

木の板に図像を彫刻して製版したものを版として用いる版画技法の総称。通常は、板目を凸版として利用する板目木版を指し、木口を版材として用いる木口木版とは区別される。版画技法としてはもっとも歴史が古く、年代がはっきり特定できる最古の例としては、中国、敦煌で発見された868年頃の作とされる仏教画が残っている。また、版画ではないが、現存する世界最古の印刷物、東大寺正倉院蔵の《百万塔陀羅尼》(8世紀中期)も木版で刷られたものである。ヨーロッパで木版が利用されるようになったのはこれよりずっと後の13世紀頃のことで、最初は布地の型染めに用いられた。ヨーロッパにおいて、美術作品として正確な年代が判明している最古の木版画は、ドイツ、バイエルン州で制作された1423年のものがある。このように人類が最初に手にした版画・印刷技法が木版だったわけだが、その後、金属版を使用するインタリオ(凹版)技法やリトグラフなどの技法が普及した近代以降もこの技法を好む画家たちは多い。たとえば、E・ムンクやP・ゴーギャンは非常に多くの木版画を制作したし、ドイツ表現主義の作家たちによる木版画も有名である。また、18世紀の日本の浮世絵木版画が19世紀末のフランス美術に多大な影響を与えたことは周知の通りである。

[執筆者:木戸英行]

現代美術用語辞典 2.0

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