現代美術用語辞典 1.0

流行

Mode
2009年01月15日掲載

ある社会に属する任意の集団が、ある傾向を何らかの契機によって採択し、長きにしろ短きにしろ、しばしその傾向に熱狂的に付き従うが、また新たな傾向が出現するや否やそれを突如放棄すること。ボードレールが「現在」の美にオマージュを捧げたように、一時的なもの、新奇なもの、変化するものに対する熱狂はモデルニテを推進する動力となった。リポヴェッキーによれば、メディアの支配する現代の高度消費社会における流行は、新しさに価値を与え個人主義を多様化させるものである。「新しさ」という意味作用の力を強調するリポヴェッキーの視点は、流行の原因を階級間の闘争に帰着させるジンメル――流行は下層階級が上流階級を模倣し、上流階級が新奇なものを追求するために生じる――やブルデュー――支配・被支配階級の闘争に加え、生産の場における新しいものと古いものとの対立による闘争が流行の絶えざる変化を促す動因となる――に抗するものである。一方、流行の体系を分析する手段としては、衣服がその典型的モデルとして選択される場合が多いが、バルトは書かれたモードを分析することによって、進化するのではなく変化する流行の意味内容がレトリックのレヴェルにしか存在しないことを明らかにした。またボードリヤールは、現代性と結びつきながら過去を廃絶し、常にレトロであるモードの構造的法則を、あらゆる指向対象を失った記号表現の循環過程にあるとしている。

[執筆者:平芳裕子]

現代美術用語辞典 2.0

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