現代美術用語辞典 1.0
総合的キュビスム
Cubism Synthéique
2009年01月15日掲載
「キュビスム」の後半部分、年代的には1912年に楕円形キャンヴァスを創案して以降のP・ピカソとG・ブラックの活動に対応する。「総合的キュビスム」という言い方は、無論それ以前の「分析的キュビスム」との対比で語られるものであり、具体的には、幾何学的な図柄だけでは表現の可能性を追究できなくなった結果、ステンシルやレタリングによって文字を導入したことを示す。「アサンブラージュ」や「コラージュ」は「総合的キュビスム」の代表的技法。二人は自分たちの実験を“写実的”と称していたが、従来の表現様式のようにもっぱら視覚に依存するのではなく、その他の知性にも感受性にも訴えかけようとするその試みは、「分析的キュビスム」を経て「総合的キュビスム」にまで達して初めて説得力を得たと言えよう。その事実は、第一次大戦以後の世界各地の芸術運動に、キュビスムが極めて大きな影響力を与えたことによって証明されている。
[執筆者:暮沢剛巳]