現代美術用語辞典 1.0
第3世代の美術館
The Third Generation Museum
2009年01月15日掲載
戦後の日本を代表する建築家のひとりであり、美術館の設計も数多く手掛けている磯崎新が提示した概念。彼は、美術館の第1世代を、王侯貴族が植民地から集めたコレクションを18世紀末頃から一般に公開する目的で開かれた美術館、第2世代を、居間に飾るために制作された移動可能な美術を掛け替えていく展示場所としての美術館とした。そのうえで、場所の固有性を回復する美術館こそが来たるべき美術館であると考え、第3世代の美術館と呼んだ。磯崎自身が設計した美術館では、「美術の枠としての美術館」という考えを中空の立方体という形態を用いて表現した群馬県立美術館が第2世代の美術館、建物と一体化した作品をもつ奈義町現代美術館が第3世代の美術館にあたる。白く四角いシンプルな展示室でありながら、その大きさ、縦横高さの比例、照明などを変化させることによって空間に変化をもたせた水戸芸術館現代美術センターなどの例も、磯崎は広く第3世代の美術館に含めている。
[執筆者:鷲田めるろ]