現代美術用語辞典 1.0
日本アンデパンダン展
Nippon Independent
2009年01月15日掲載
日本美術会が主催した、無審査、自由出品を旨とした展覧会。日本美術会は戦前の画壇体制を受け継いだ文部省主導の「日本美術展(日展)」に反対し、共産党の主導のもとで美術家の民主的結集を目指す団体として1946年に成立した。47年の日展で、戦前の官展を牛耳っていた芸術院による展覧会主催と無鑑査制という旧弊が再度復活し、戦後目されていた日展の民主化が事実上失敗すると、日本美術会は日展民主化とは違ったかたちでの美術の民主化を追求するようになる。創立時151人の会員を擁し、委員には須田国太郎、林武、児島善三郎、岡鹿之助、柳原義達、土方定一らが名を列ねていたこの会は当初、複数団体の共演を目指した団体連立展構想を唱えていたが、毎日新聞社主催による「団体連合展」に先取られたかたちとなり、アンデパンダン形式が採用され、1947年に第1回展が東京都美術館で、その後毎年開催され現在に至る。同会は反体制的傾向が強く、「上からの民主化」に対抗する「下からの民主化」を鼓舞し、民主主義美術の創造と普及、大衆への美術の開放と大衆の美術的資質の高揚をスローガンとしてアンデパンダン展の実行に踏み切り、出品者も専門家以外の労働者、市民、児童など多岐に渡っているが、当初から内部での政治的イデオロギーを巡る正統派争い等に閉塞性が垣間見られ、またその思想性と表現とのせめぎあいがむしろ互いを拘束しあう状況も否めず、60年代に若手作家の創造の場として機能しえた読売アンデパンダン展にくらべて、豊かな表現形式を生み出す土壌とはなりえなかった。
[執筆者:宮川暁子]