金野弘(1915-1985)は秋田県に生まれ、京都工芸繊維大学の前身校のひとつである京都高等工芸学校図案科を1938年に卒業後、大阪高島屋宣伝部で活躍するとともに、国鉄(大阪鉄道管理局)や関西汽船などの観光ポスターを長年にわたり手がけたグラフィックデザイナーです。1967年から1975年まで京都工芸繊維大学工芸学部意匠工芸学科で非常勤講師を務め、1983年には自作ポスター約200点を京都工芸繊維大学美術工芸資料館へ寄贈しています。
 金野は、日本国有鉄道と日本観光協会共催の観光ポスターコンクールでの入賞をきっかけに、国鉄のポスター制作を手がけるようになりました。従来の情報伝達を主としたポスターに対し、業務上の機能を果たしながら、さらに人の心を強く動かすためには何を加えるべきか―その問いのなかで見いだしたのが、「旅情」でした。旅情とは、人々を旅へと誘う情緒や、旅の中で感じる、しみじみした心情を意味します。金野弘の観光ポスターは、単なる情報伝達にとどまらず、「旅するこころ」をのせて人々を旅へと誘います。ぜひこの機会に、その魅力をご覧いただければ幸いです。