この度、iwao galleryでは、久村卓の個展「蔵前手工芸アートセンター」を開催いたします。
美大で彫刻を学んだ久村は、ヘルニアの発症をきっかけに、重い素材や力を必要とする従来の彫刻制作から距離を取り、刺繍やDIY、ハンドメイドなど、日常に近い素材や美術の周縁にある技法を用いた独自の表現へと移行しました。そこには、物理的な「軽さ」だけでなく、美術制度やアカデミズムが纏う重苦しさから自由になろうとする意識が一貫して流れています。
本展では主に、台座や周囲の景色を刺繍し額縁をはめることで、服のロゴマークや汚れをモニュメントや抽象絵画に見立てた作品を展示します。久村は、既製品や日用品を、美術館という制度や文脈によって作品へと転換させたデュシャン以後のレディ・メイドの系譜を踏まえながら、「美術を作らずに、作る」という考えのもと、軽妙洒脱なアプローチで作品を成立させます。美術と日常が未分化であった時代を現代へと手繰り寄せ、豊かな感性(ユーモア)と見立ての感覚が交差します。作品の前に立った鑑賞者は、固定化された価値観や見方がゆっくりとほぐれていくでしょう。是非この機会にご高覧ください。
また、会期中の毎週末には《織物BAR》を開催いたします。作家が「これも台座」と名指すカウンターに座って好きな織り糸をオーダーし、手のひらサイズの織物を制作するワークショップもあわせてお楽しみください。