本展覧会は、令和6年度に鈴木徹が多治見市指定無形文化財「織部」の保持者に認定されたことを記念し、その歩みと緑釉による創作の展開を紹介するものです。
桃山時代、茶の湯の流行とともに美濃で誕生した美濃桃山陶には、黄瀬戸、瀬戸黒、志野、織部の4種があります。その中でも織部は、それらの集大成として16世紀末から17世紀初頭に成立し、これまでにない「歪み」と「大胆な意匠」を特徴とし、その破格な美と革新さから解釈と表現の幅が広く、それゆえ今なお多くの人を惹きつけてやみません。そしてその歴史から、緑釉は「織部釉」とも呼ばれるほど、表現の代表格を担ってきました。
鈴木は1964年、多治見市に生まれました。祖父は、重要無形文化財保持者である加藤土師萌から「釉薬の研究では右に出るものはいない」と評された窯業技師・鈴木道雄、父は、「志野」の技法で重要無形文化財保持者となった陶芸家・鈴木藏です。
鈴木は幼少の頃から父・藏と同じく陶芸家を志すも、大学時代には親元を離れ、京都で歴史を学びます。一度は学芸員を目指すも就職先が無く、やきもの好きの教授に勧められ京都府陶工職業訓練校(現・京都府陶工高等技術専門校)で陶芸を学ぶことになります。そこで初めて自ら調合した釉薬を施した湯呑みが焼き上がり、窯から取り出した瞬間、「DNAが覚醒した」感覚を覚え、本格的に陶芸に向き合うようになります。さらに、京都国立近代美術館で目にした、昭和を代表する陶芸家・岡部嶺男の《総織部大鉢》に触発され、織部の枠を超えた表現を目指して銅緑釉の研究を始めます。
以来、日本伝統工芸展を舞台に、櫛目、泥刷毛目、2色の緑釉、三彩等のシリーズ、そして近年の「破殻(ワレカラ)」へと表現を展開しながら、常に自身の作風という殻を破る試みを見せてきました。この精神が鈴木の原点であり、革新たらしめているといえるのではないでしょうか。
鈴木徹による緑釉を中心とした破格の現代的表現をぜひご覧ください。