このたびHAGIWARA PROJECTSでは、2026年9月12日(土)より、ザック・プレコップによる個展「Noise」を開催いたします。本展は、当ギャラリーにおける同作家7年ぶりの個展となります。

ザック・プレコップ(Zak Prekop、1979年シカゴ生まれ)は、ニューヨーク州を拠点に活動するアーティストです。2008年にシカゴ美術館附属美術大学(School of the Art Institute of Chicago)でMFAを取得したほか、ドイツ・フランクフルトのシュテーデルシューレでも学びました。

Prekopの絵画は、パレットナイフを使って素早く、即興的に描かれる筆致から始まります。彼はグラシン紙に絵具を塗り、その描いた部分を切り抜くことでステンシルを制作します。そして、そのステンシルを絵画の表面に重ね、すでに描かれている形の内側、外側、その背後や手前に、次の形を配置していきます。このプロセスを繰り返すことで、複数の形や構成が蓄積し、重なり合い、複雑な幾何学的絵画へと発展していきます。そこでは、イメージを読み取るための固定された視点は存在しません。

一見すると、Prekopの完成した絵画は、デジタルによって生成されたイメージを思わせるかもしれません。しかし、その複雑な画面は、紙を切り、ステンシルを配置し、その輪郭に沿って手作業で描くという、極めて身体的かつ反復的なプロセスによって生み出されています。この繰り返しによって、形や色が次々と蓄積し、重なり合い、互いに作用しながら、画面に密度の高く複雑な視覚構造が徐々に形成されていきます。この重層的な構造は、作品の見え方そのものにも影響を与えます。イメージを一度に全体として捉えることはできず、鑑賞者はさまざまな形や線、層のあいだを視線で移動しながら、少しずつそのイメージを辿っていくことになります。

プレコップは、こうした制作のプロセスを音楽に近いものとして捉えています。ノイズ、ミニマル・ミュージック、テクノ、ジャズなど幅広い音楽に親しむ彼にとって、音楽とは、始まりから終わりへと直線的に進むものではなく、複数の音やレイヤーが重なり合い、静と動が共存するものです。絵画においても、プレコップは形や色、線、レイヤーを重ねながら、それぞれの要素が互いに作用する関係を組み立てていきます。それは、コンポーザーがさまざまな音を組み合わせてひとつの楽曲を作り上げる行為にも似ています。彼にとって絵画は、単に静止したイメージを見るものではなく、画面に重ねられた反復、重なり、リズム、そして視覚的なノイズが複雑に響き合う「動きとしてのイメージ」を感じ取りながら、鑑賞者自身がその構造を辿っていく体験なのです。

作家略歴:ザック・プレコップ Zak Prekop 1979 年生まれ、ニューヨーク州在住。2008 年 MFA, The School of the Art Institute of Chicago 修了。近年の個展に The Aldrich Contemporary Art Museum (2025, コネティカット)、Painting What I Did, Maxwell Graham Gallery (2024, ニューヨーク)、Basho Revelations, Galería Marta Cervera (2022, マドリッド)、Shane Campbell Gallery (2019, シカゴ)、HAGIWARA PROJECTS (2019, 東京)など。主なグループ展にBasic Matters: Substance in Contemporary Art, Columbus Museum of Art (2023, オハイオ)、File Under Freedom, Bergen Kunsthall (2022, ノルウェー)、New Space / New Works, HAGIWARA PROJECTS (2021, 東京)、Maximum Minimum in Unum, Miller Gallery at Carnegie Mellon University (2016, ピッツバーグ)、Painter, Painter - curated by Eric Crosby and Bartholomew Ryan, Walker Art Center (2013, ミネアポリス)など。