アートは心をあたたかくしてくれる-富永敏博は、この言葉を信念に生まれ育った清須を拠点として風景を描き続けています。自然と都市が交わる日常での気づきや違和感をもとに、対象をそのまま写し取るのではなく、やわらかな色彩やシンプルな形、ときにユーモアを含んだイメージへと組み替えます。それは風景を記憶や感覚の側から捉え直すと同時に、私たちが共有しているはずの風景が持つ、曖昧さや不確かさを映し出す試みといえるでしょう。
また富永は、絵画制作と並ぶ重要な活動としてワークショップを行っています。絵画作品に登場するイメージを起点としながら、参加者一人ひとりの自由な発想に委ねることで、異なる視点やずれが重なり合うひとつの風景を立ち上げます。
近年、私たちを取り巻くまちなみはどこか均質になり、人々のつながりも見えにくくなりつつあります。その契機のひとつが、2019年末から数年間にわたって続いた新型コロナウイルス感染症の影響です。その渦中に当館で開催した富永の個展(2020)では、「風景を描くこと」や「同じ空間を共有すること」の意味が問い直され、富永の表現に通底する「共有そのものの不確かさ」が浮かび上がりました。
本展では、新作を含む絵画作品とともにワークショップによって更新される空間が5日間のみ現れます。社会の断片化が新たな形で進むいま、富永が一貫して向き合い続ける「風景」がどのように立ち上がるのか。「アートは心をあたたかくしてくれる」という言葉が何を意味するのか。みること、作ること、協働することが行き来する中で問いかけます。