森岡君とMr.さん それはS&M(高松市コミュニティ・カレッジ'99[芸術コース])
10月8日(金) 18:30 〜 高松市美術館講堂にて
出演:Mr./森岡友樹/花澤武夫(司会)
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ミスターのパフォーマンス
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ミスターのペインティング
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今年のコミュニティ・カレッジ計5回のうちすでに3回が終わり、興味深い話もたくさんあったのだが、個々のレクチャーの内容は後日まとめる予定なので、ここでは、10月8日に行われたミスターこと岩本正勝のパフォーマンスの報告をしたい。
「アルプスの画家」として知られ、自分が買い物をしたレシートに描くところのくノ一忍者オマメの連作等が絶大な売り上げを保持している(らしい)ミスターは、この夜、迷彩模様の短パンにスニーカー、ドラえもんのTシャツ、大小二本の日本刀(模造)を背に差した姿で現われた。金髪の90度横モヒカン(写真を参照)というオリジナルなヘアスタイルもポイントである。ちなみにこれは、近くの商店街で買ったスキカルで開演前に急遽剃り上げたもので、少し離れると、坊主頭に妙なほおかむりをしている、もしくは毛皮のヘッドホンをかけている、ようにも見える。ステージにはキャンバスをたてかけたイーゼルがひとつと、デジタルカメラがレンズを観客に向けてセットされ、その映像が正面のスクリーンに映し出されるようになっている。
さて、そのステージおよびステージの周辺でミスターは、終始比較的緩慢に、刀を抜いたり振ったり、舐めたり、見栄を切ったり、変な顔をしたり、腕立て伏せをしたり、といったような動きというか踊りというかパフォーマンスを、おおむねカメラに向かって泰然と行い続けた。したがって観客は、直接的には主としてミスターの背中を見つつ、スクリーンではそれを眺める自分達の姿およびミスターの顔と対面していたわけである。その様子はことばではなかなか伝えがたいが、一般的な社会常識と照らせ合わせれば、まあ5分くらいで十分に堪能できるであろうこのパフォーマンスは、予定されていた15分を超え、30分を超え、そろそろ観客の無言のブーイングが出演者およびスタッフ全員(ミスター以外)を圧倒しつつある頃、あせり始めた司会の花澤武夫によってようやく遮られ、とりあえず終了した。というわけで、まさにタイトル通り、Mの名に恥じない冷却系の優れて脱物語的なパフォーマンスであったといえる。
調整室で見ていた私はといえば、伝え聞いて想定していた以上のあまりに底冷えのする寒さに思わず目を伏せても、室内モニターの中の観客の視線が直にこちらを向いているという逃れられぬ痛い状況の中で、とはいえ、現在「パフォーマンス」と呼ばれているものでも、予期せぬことなどまず起きず、いくらかの芸を見せいくらかの感動をもらって家に帰るということがほとんどなのだから、徹底して感動とは無縁のミスターのパフォーマンスはむしろ困難なまでに潔いだろう、というような講釈を急いで考え出していた。
もっとも、この日はこれで終わりというわけではなく、引き続きミスターのトーク、森岡氏のスライド・レクチャー(話している間、彼はずっとビデオカメラを手持ちで観客に向けていた。そのためにとても落ち着いて話せたと後で語っていたが、その映像は前のスクリーンにプロジェクトされていたわけで、客は逆にまったく落ち着かなかったようだ。なお、当日、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の学芸員である中田氏が手伝いに来てくれていたのだが、たまたま丸亀出身である森岡氏となぜか容姿がきわめて近似しているとのもっぱらの評価であった)、花澤氏からのHIROPON FACTORY(出演者3人が所属する村上隆主催のオフィス)の紹介など、実生活に役立つ話も満載であった。ただ、基本的に仲間内でダベっているノリであったっために、聞いている人はやや引いてしまう、というか何のことをしゃべっているのか関係者以外には皆目分からない、ということが多々あり、次の日に彼らが行くといっていた名古屋パルコの観客ならそれなりに食いつくかもしれないが、ここではやはり士郎正宗程度の[註]をこちらで用意すべきであったかと公立美術館的に思う半面、こういうものはこういうナマをただ見りゃあいいのではないか、というような空転する葛藤とは無関係に、ミスターは再びステージに向かうとキャンバスにペインティングを始め、他の出演者が話している間、黙々と2Dアニメ少女の肖像を描き続けた(未完、写真参照)。
ざっとこういうような経過であったため、途中で出ていった人たちのことをことさら責めるつもりはないが、一方で、イベントの終わった後、SPEEDのナンバー(これは出演者からのリクエスト)が流れる中、アーティストを囲んだ記念写真の撮影で常になく賑でいた(なぜ?)ことも追記しておきたい。なお、コミュニティ・カレッジのこれからの日程は次のとおり。 |