岡山
柳沢秀行
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ミーツドローイングカフェ
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出会いと交流の場になった
ドローイングカフェ
仮設壁にドローイングする
若いアーティストと観客
岡山市に拠点を置くグループ「MEATS」(ミーツ)によるドローイングカフェが開催された。
以前にも簡単にご紹介した
が、この「MEATS」は、特定の表現領域や団体に帰属せず、広く文化、芸術をサポートすることを目的とした団体で、大半が30歳代前半のコアメンバーの9名に、顧問2名を加えた陣容。
すでに「秘ミーツ基地」として月1回のペースでカフェを開催してきたが、今回はNPO法人格申請記念としての拡大版バージョンで、会場では若いアーティストたちの即行ドローイングと、新進のクラブDJによるアートとサウンドのフリーセッションが行われた。
え? NPO。そうなんです。なんとNPO申請してしまったのです。
しばらく待って来年4月までには認可がなされる模様。アートサポートを明確に打ち出した団体がNPO法人格を認可されれば、おそらく全国初ではないでしょうか。それに認可がおりる4月過ぎから、早速本格的で大規模な活動が展開されるという噂も。まだ内緒のことが多いながらも、来年岡山は、このアートスケープを賑わす話題を次々と提供することとなるでしょう。
さて当日の夜の盛況ぶりは写真をご覧のとおり。岡山の中心繁華街のアーケードに面した会場では、若いアーティストたちが仮設壁にがんがんドローイングを行い、かたわらでは様々な領域の人たちが出会いを、そして会話を楽しんでいきました。
岡山のような地方都市では、こうした交流の場がなかなか形成されず、それゆえ面白い人材同士が隣り合ったまま気づかずにいることもありますが、こんなカフェがあったら、その力がまたどんどん表に出てくることでしょう。
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MEATS:
http://www.meats.to/meatsindex.htm
時:1999年10月23日(土)
会場:岡山市表町 表町アークスクエアービル1F
よみがえる古代のわざ ガラス工芸−歴史と現在−
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岡山市オリエント美術館は良質なコレクションで知られるが、ガラス製品についても、ガラス発祥の地である古代メソポタミア・エジプトから、ローマン・ガラスやササン朝、そしてイスラム期に至る時代をカバーしており、オリエントのガラス工芸史の全貌を概観できる国内稀有のコレクションを揃えている。
これらの作品を一挙公開するとともに、地元で活躍するガラス作家19名と共同して、彼らによる復元作品を同時に展示するのが今回の展覧会。
なにせ作品自体は存在していても、それがどのような組成で、どのような技法で制作されていたのかは考古学的な探求だけではわからない。そこで地元の作家たちに、作品を存分に検証してもらい、さらに研究の蓄積も提供して、その再現や制作技法を探求するというナイスなアイデア。
もともと岡山、倉敷では大原美術館やこのオリエント美術館の作品たちが、多くの領域の作家を育ててきた歴史のある土地柄。ガラス作家についても全国に名だたる倉敷ガラスの小谷真三氏や、まさにオリエント美術館のコレクションが大きな影響源となり独自のコアガラスで高い評価を得る松島巌氏など、実力派がそろっている。さらに今回は倉敷芸術科学大学が施設を提供し、美術館、大学、作家がそれぞれの資源を提供し合ったすばらしい企画でした。
コレクションへのアクセスとしてもすばらしい。それに作品が、ほんとうに美しい。さらに作家たちが作品再現のために探求した技法を駆使して制作したオリジナル作品が販売されている。実に良い展覧会でした。
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会場:岡山市立オリエント美術館 岡山県岡山市天神町9-31
会期:1999年10月7日(木)〜11月28日(日)
問い合わせ:Tel. 086-232-3636
学芸員レポート[岡山県立美術館]
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今年、岡山県立美術館では「こんにちは美術館」と名づけた一連の教育普及プログラムを実施している。
自館のコレクション=常設展へのアクセスツールとして、ワークショップを取り上げ、そのプランニングと実施のために、また、そのために美術館の現有勢力に、より強力なサポーターとして、アーティストでもあり、また学校での教員経験もあり、美術館でのワークショップ経験も豊富な小石原さんを招いたわけだ。小石原剛氏を1年間ゲストとして招くというプログラムだ。
美術館としては、もとから講座やシンポジウムなどの座学、それから展示場での作品解説などを実施してきたが、より深く常設展示場にならぶ作品や美術館というものを理解してもらう手段として、また座学はどうしてもご高齢のお客様に客層が固定するため、新たな手段としてワークショップを採用することとなった。
この「こんにちは美術館」に関連して今回書きとめることは、日頃同じ現場にいらっしゃる方からすれば当たり前のことだが、客層の年齢層別にインフォメーションをとどける手段について。
今回のプログラムは、日頃から美術館に近い客層をより一層強力なサポーターとするためのプログラム、行ってみたいけどちょっとためらってしまう客層をキャッチするプログラム、そして日頃はまったく美術館に見向きもしない客層を振り向かせようとするプログラムと、ある程度、客層を読んでのプログラム設定を行っている。
そのため広報も各プログラム毎に、いったいどの手段が有効かも考えながら作戦展開しているのだが、これがほんとに難しい。
まず中学生をターゲットにするのが難しい。新聞で取り上げられても、中学生は新聞自体をあまり読んでいないため集客につながらない。県下の各学校に各クラス分チラシを郵送しても(時には生徒数分だけ。これがいかに労力がいることか)、どうもその前に処分される憂目にあうのか、どれだけ生徒の眼に届いているのか怪しい。ともかく「あそこであんなことやってるよ」というインフォメーションそのものが届かないようだ。これまで美術館でのイベントに参加してくれた中学生のデーターベースはあるが、そこばかりから動員を求めては、客の固定化でしかない。ということで、中学生へのインフォメーション、新規客層開拓は難しい。
それに引き換え、高校生は新聞も読むし、「美術好き」と自覚して、主体的に情報を集める人数も多い。そのうえ大学生は美術系の狙いうちも出来れば、学内の掲示システムも整っているから、イベントのインフォメーションは届くのだが、世の中他に楽しいこともたくさんあるだろうから、そうそう大量動員には結びつかない。それでもイベント毎に1人2人と新手の顔が見えるのが大学生である。
さて最も集客動員がきく、言わばイベントで一番人気が出るのが、小学生向のものである。と言うよりも、小学生は単独参加が難しいので、実際はそのお母さん、すなわち20〜30代の女性がターゲットになる場合である。実際「小学生親子鑑賞教室」を開くと、新聞に小さな告知記事がでるだけで、定員の2倍応募がある。また各学校に1枚チラシを郵送するだけで、必ず参加者の中に学校でのインフォメーションで知ったというお客様がいらっしゃる。
一方で最も集客が困難なのが成人男性。たしかに今の社会で平日の昼間に成人男性を展示場で見かけたら、それはおそらく同業者だと我々が思うほど、成人男性と美術館との距離は遠い。なぜこないのか。そう、なぜこないんだろう?。
「こんにちは美術館」事業の中でも、まず成人男子の姿を目にすることはない。目にする時は、夫婦づれか、若いパパ。単独参加はかつてない。
そこで今回、昨今の写真それもピンホールカメラブームにすがって、美術館内をロケハンして自分でピンホール写真を撮影、現像する「光の貯金箱」というワークショップを、カメラ好き男性を狙って18歳以上限定で実施してみた。
広報はプレスリリース、それからカメラ店にチラシを絨毯爆撃。しかし結果、見事はずれ。人数は集まったが、結局20〜40歳代の男性は0。一人もこなかったのです。
でも、これは笑ってられない、深刻な問題ですよね。やはり美術館としてはなんとしても成人男性を攻略せねば。
「こんにちは美術館」事業を通じて、こんなことを改めて確認しました。でもこれはワークショップだからゆえではなく、おそらく美術館と社会の各年齢層との関連をそのまま反映しているのではないでしょうか。
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