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兵庫  山本淳夫
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exhibition絵画劇場−第四幕

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稲垣元則
稲垣元則

西村みはる
西村みはる

田中朋子
田中朋子

 大阪市内に新世代のギャラリーが増えてきた。オーナーの年齢層が20〜30代で、貸しと企画の折衷形態が多い。若いオーナーの熱意を反映して、提示したい方向性が明確な画廊が多いのは嬉しいが、なかでも気になっていたのがOギャラリーeyesである。東京銀座のOギャラリーと姉妹関係にあり、東西の作家交流も積極的に行う意向だという。ディレクターの唐木満氏は以前から画廊ベースで若手作家を紹介する企画展を、フリーの立場で精力的に組織していた人物。そしてアシスタント・ディレクターは、なんと作家の館勝生氏である。この二人がタッグを組むからには、「物申したい」ことが山ほどあってのことに違いない。
 実をいうと、本展について記述することを事前に半ば決めていた。それには二つの理由がある。まず今回が同ギャラリー初の若手作家のグループ展であり、その方向性を端的に示すことが予想されたから。そして西村みはるが初めて油彩の大画面を発表するから、である。西村みはるて、そりゃ誰じゃい、というのが関西でも大方の反応であろう。それはまあ当然で、今年2月シティギャラリーのグループ展(それも唐木氏の企画だった)に数点のドローイングを出品した以外に目ぼしい出品歴はない、ほとんど無名の新人なのだ。しかし、それがただ者ではなかった。少なくとも、極めて私のツボにはまるタイプ、ストライクゾーンのど真ん中だったのだ。和紙にモノクロームのオイル・バーで原初的な線が描きなぐってある、というとどこにでもありそうだが、その輝きは抜群で、天性の閃きを感じさせた。
 さて、今回である。少なくとも「素晴らしい、よかった!」とすっぱりいいきれる展覧会ではない。みる側にも、作り手にも宿題を抱え込ませる問題作、というところか。もちろん、決してつまらないわけではなく、各作家の誠実な視線が痛いほど伝わってくる、初々しい魅力がそこにはあった。3人の中で安定した力をみせたのが稲垣元則である。もともと仕事の量も多く、作風もかなり幅広い、いい意味でつかみ所のない作家だが、そうしたバックグラウンドがよいかたちで、確信をもって画面に定着していたように思う。一方、田中朋子と西村みはるの場合はどうだろう。両者の資質は対照的で、彫刻になぞらえるなら、田中は塑像のように絵具を足し算しながら空間を育むタイプ、西村は木彫のように無駄のない線で空間を掘り込んでいくタイプである。「油彩の大画面」への初挑戦が今回全員への課題であったわけだが、女性陣に関しては、まだ新世界への入口にたったばかり、という印象をぬぐえない。
 とりあえず、この展覧会によって同ギャラリーの企てがかなり明瞭になったと思う。それは、戦略的なCIや広報展開で既成事実を作るやり方とは全く対極にある態度である。すなわち、自分たちが納得のいく「質」をじっくりと育み、提示すること。そして、その過程をもあたかもライヴのように観客と共有する態度である。第四幕=終幕であるにもかかわらず、私には幕切れに「つづく」の文字がオーバーラップしてみえた。次回は各作家の個展の上演を望む次第である。
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アーティスト:稲垣元則、田中朋子、西村みはる
会場:Oギャラリーeyes http://www2.osk.3web.ne.jp/~oeyes/
   〒530-0047大阪市北区西天満4-10-18 石之ビル3F
会期:1999年10月18日(月)〜10月30日(土)
開廊:11:00-19:00/土曜日17:00(日曜休廊)
問い合わせ先:Tel. Fax.06-6316-7703 Oギャラリーeyes oeyes@osk4.3web.ne.jp

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exhibition岡野香織展

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岡野香織展

岡野香織展

岡野香織展

岡野香織展

 岡野香織も昨年の初個展をみて、気になっていた作家である。結論からいうと、好ましい進境を示したといえるのではないか。絵の骨格がより逞しくなった。
 岡野がモチーフにするのはイモやキュウリなど、身近な植物全般である。それらの有機的なフォルムを単純化し、多くの場合は繰り返しのパターンで画面を埋め尽くす。というと、これもよくあるタイプに聞こえるかもしれない。事実、過去のファイルをみると、既視感の強い、キワドイものもなくはない。まあ、それは誰にでもある通過点で、とっくに脱却して確実に独自の資質をのばしつつあることは強調しておこう。
 岡野の絵のよいところは、そうした有機的なフォルムがへんに意味深でないことだ。「ウラに何かありまっせ」みたいなうさん臭さがなく、「存在そのもの」とでもいうべき明快さがある。とにかく、第一印象はダイナミックできっぷがよい。しかし決して粗くはなく、大画面では描かれた形態がひしめき合って、一種の圧迫感から生じるダイナミズムを演出する一方、小品では余白を活かして粋な空間処理を行っている。なかなか器用なところもあるようだ。色彩は地と図の2色に限定されているが、下塗りの異なる色彩が微妙にみえ隠れし、空間に厚みをもたらしている。時おり見受ける「お手軽色面抽象」に陥っていないのである。ちゃんと絵画的なツボを心得ていながら、天然の勢いがある、いそうでなかなかいないタイプである。
 作家が「絵画の物質性と意味性がどうのこうの」とやりかけて、居合わせた面々に冷やかされ、舌を出す一幕が面白かった。出身は関西だが、美大は東京という経歴が端的に表れた一瞬でもあった。運悪く、相手が上滑りのことばが通用するような連中でないことを、すぐに悟ったようだ。カンも悪くはないらしい。
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会場:キュービック・ギャラリー http://plaza18.mbn.or.jp/~cubic
   〒541-0051大阪市中央区備後町3-1-2 アトラスビル201
会期:1999年10月25日(月)〜10月30日(土)
開廊:12:00-19:00/土曜日17:00(日祝休廊)
問い合わせ先:Tel. Fax.06-6229-2321 キュービック・ギャラリー

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report学芸員レポート[芦屋市立美術博物館]

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 坂井淑恵と高橋信行の二人展「グリーン・イン・スピリット」の事後処理もほぼ終え、近況ということで「学芸員のアフター・ファイブ」なんてどうかな、と思っていたところ、12月にせまった小企画展の準備が佳境でそれどころではない始末。筆者の住む西宮市には面白い飲み屋が多く、一番ディープなやつを紹介したいと思っていたら、あっさり先を越されてしまった。朝日新聞にマンガ評論家の村上知彦氏がご紹介されていたバー「メタモルフォーゼ」である。いまは亡き同氏の父君、村上三郎氏もごひいきにされていた素敵なお店で、そのうちまた違う角度から記事にしてみたいものである。
 9月の次に12月の展覧会の担当。ちょっとやり過ぎじゃない、と思われそうだが、次回は小さな資料展で、いわゆる美術作品の展示ではない。「美育−創造と継承」という(平凡な)タイトルで、「童美展」が第50回をむかえるのにちなんだ企画である。この「童美展」、就学前の児童を対象にした公募展なのだが、知る人ぞ知るブッ飛んだシロモノである。もとは吉原治良によって創設され、現在も「具体」の元会員たちによって審査されている、といえばだいたいどんな様子か想像できるだろう。全国各地から毎年約一万点が搬入され、厳選を経て約千点が陳列される。しょせんガキの絵、などとたかをくくってたらとんでもない。ハンパな大人のゲンダイビジュツなんか吹っ飛んでしまうのだ。我々は毎年末この展覧会で眼の大掃除をするのである。
 学芸員の悲しい性で、過去の「童美展」歴代入選作を展示したり、大正期の自由画運動から久保貞次郎の創造美育運動を経て今日に至る歴史的な流れ云々といった内容を当初は考えないでもなかった。しかし、どうにもあまり面白くなさそうだ。そこで自分にとってリアリティのある、児童美術をめぐる「考え方」そのものを展覧会にしよう、そう考えた。
 展示室には、モニターで様々な立場の人々へのインタビュー映像が流れている(はず)。

 1.1950年代当時、子どもの絵と熱心に取り組んでいた人たち。
 2.現在、子どもの造形活動に対して先進的な取り組みをしている事例。
 3.かつてそのような境遇にいたり、「具体」のメンバーに個人的に絵の手ほどきを受けた
   児童の追跡調査。

 美術館教育や普及事業の全国的なブームである。むろん、そうした活動の成果はきょう明日にすぐかたちとなって現れるものではない。そういう意味で、3.に登場する人々は、失礼ないい方だがたいへん貴重なサンプルなのである。「具体」は1956年に刊行した機関誌の第2号で、当時小学6年生だった乾美地子を特集として取り上げている。40年以上を経て、現在はひとりの平凡な主婦となっているのだが、彼女へのインタビューはひとつの大きなみどころであろう。幼い日々の体験は、その人生にとって一体いかなる意味を持ったのか。恐らくそれは極めて示唆に富むものであり、かつ我々にとって大いなる反省材料でもあるに違いない。

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