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Column Index - Apr. 1, 1997


a)【《アートシーン90-96 水戸芸術館が目撃した現代美術》】
 ……………………●名古屋 覚


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《アートシーン90-96》

会場:
水戸芸術館
会期:
前期
《見ることは信じること》
1996年11月30日〜
 1997年1月19日
後期
《浮くかたち》
1997年2月1日〜
 3月16日
問い合わせ:
水戸芸術館
Tel.029-227-8111
森村泰昌

森村泰昌

鯨津朝子

鯨津朝子
「INSIDE-OUT wind OUTSIDE-IN」

長沢英俊

長沢英俊
「花々のくに」

間島領一

間島領一
「Teacher's Pet」

中村哲也

中村哲也
「螺王」

写真はいずれも
水戸芸術館での展示風景
写真提供:水戸芸術館






水戸芸術館
http://www.soum.co.jp/mito/

森村泰昌展 美に至る病
http://www.art-museum.
city.yokohama.jp/kakushu/
rgb/rgb23/rgb23EX.html

Profile: Yasumasa Morimura
http://www.guggenheim.org/
boss/yasumasa.html

Yasumasa Morimura - Reference Page
http://www.artincontext.com/
listings/pages/artist/
8/a9v6bbb8/menu.htm

GO ON THE STAGE MORIMURA
http://web.kyoto-inet.or.jp/
people/uferart/YM_j.html

Morimura Yasumasa 1985-1996
http://web.kyoto-inet.or.jp/
people/uferart/YM85_j.html

曽根裕展Scoop
http://web.kyoto-inet.or.jp/
org/artjapan/
AN-0215-J.html

Welcome to the Daimler-Benz Home Page
http://www.daimler-benz.
com/index_e.htm

八谷和彦のアルス・エレクトロニカの1週間
nmp Net Gallery

ポストペット(八谷和彦)
http://www.so-net.or.jp/
postpet/

会田誠《NO FUTURE》展
−椹木野衣
Art Watch - Nov. 19, 1996

Temple Bar Virtual Gallery(メイプルソープ)
http://www.temple-bar.ie/
gallery/

Robert Mapplethorpe - Reference Page
http://www.artincontext.com/
listings/pages/artist/
m/0o2vobbm/menu.htm

FINE Magazine Photography: Barbara Kasten
http://www.finemagazine.
com/fine1/photo/
hkasten.htm

TAMA VIVANT '85「…あるいは天気図」/青木野枝
http://www.hama-net.or.jp/
tamavivant/85page.htm#aoki

スタジオ食堂 / 中村哲也
nmp Net Gallery

Kyo No Machiya / Entrance
http://town.hi-ho.or.jp/
gallery/kyo/topj.html

Christo & Jeanne-Claude Home Page
http://www.beakman.com/christo/

Christo and MPEG
http://www.mpeg1.de/
christo/

川俣 正 コールマイン九州
−村田真
Art Information - Aug. 6, 1996

Bienal - Universalis - Cai Guo-Qiang
http://www.uol.com.br/
23bienal/universa/
iuascg.htm

Profile: Cai Guo Qiang
http://www.guggenheim.org/
boss/cai.html

Iwanami Paperback(西村陽平)
http://www.flab.mag.keio.
ac.jp/fob/dante/nishimura/
index-j.html

《アートシーン90-96
水戸芸術館が目撃した現代美術》

●名古屋 覚

《アートシーン90-96》は、水戸芸術館現代美術センターで昨年秋からこの3月半ばまで、2期にわたって開催されたグループ展である。1990年代前半に同センターが企画展で紹介したアーティストたちの、同センターで未発表のものを含む作品をそれぞれ数点ずつ展示したもので、アーティストの名を借りた同センター自体の回顧展ともいえる企画であった。《見ることは信じること》と題された前期は20人(グループ)の絵画、写真およびビデオを用いた作品、《浮くかたち》との題の後期は12人による彫刻やインスタレーション中心の展示である。前期・後期ともに、大部分は日本の現代美術の第一線で活躍する若手アーティストの仕事で構成され、現代美術の紹介を専門とする画期的なスペースとして1990年にオープンした同センターのこれまでの実績を存分に示していたといえる。しかしながらその展示内容は、必ずしも過去数年間の美術の豊かな成果を証明するものではなかった。

前期展

前期の展覧会場。大きな展示室で、福田美蘭と森村泰昌という2人の有名作家が対峙する。福田の、一般的に美術の道具としては扱われないカラーマーカーで描いた大きな“絵画”、名も知れない画家の安売り用の風景画を模した“作品”など、美術の価値を問い直す仕事は、発表当時こそ新鮮だったが、2度以上見て面白いものではない。森村の展示は、彼が有名な女優に扮して映画の一場面に身を置いた写真のシリーズのうちの3点を、映画看板作家に絵に描かせたものを含んでいた。「女優」シリーズは国内外で評判になったが、それを絵に写したところで新たな意味が生じるとは思えない。ひとつの試みが成功すると、その“関連商品”を発表し続ける作家が少なくないが、これもそうした一例であろう。
  評者はそもそもビデオを用いた仕事を「美術」と認めない立場なのだが、それでも曽根裕が、複数の知人に海外で夜行バスの窓から見える風景をビデオに撮ることを依頼し、撮影された映像を継ぎ合わせた作品には、「芸術家」の主体性を再検討する意義も見いだされ、やや興味深い。だが、自ら宙づりになって数を数え続けるさまを撮影した宮島達男の作品は、どう説明されようと、アーティストの独りよがりにしか見えない。
  クジラの解体現場の写真とクジラ肉を用いた食品の模型を並べた遊佐辰也の作品は、一種のドキュメンタリーとしては面白くても、アートの域には達していない。
  ただ、鯨津朝子の、細長い展示室の窓に面した壁に少しずつ描いた放物線のようなドローイングと、そのドローイングから制作の各段階で抜き出した部分をガラス板とともに重ねて窓の内外に設置したものから成るインスタレーションは、巧みな空間演出とさわやかな視覚効果で印象的であった。鯨津はこのほど、ダイムラー・ベンツグループのサポートでフランス南西部、ガスコーニュ地方の小都市モンフランカンに日本の若手現代美術家を派遣するアーティスト・イン・レジデンスのプログラムの受給者に選ばれ、この夏の2カ月半現地に滞在、制作・発表する予定である。今後の展開が楽しみなアーティストだ。
  《見ることは信じること》という前期展のタイトルは、特殊な箱を通して眺めると電光掲示板の文字が読み取れるという八谷和彦の出品作のそれと同じである。ある意味で、「見ることは信じることか?」を問い続ける現代美術の文脈の上で意義のある仕事というなら、コンセプトはどうあれ単なる“装置”でしかない八谷の作品よりも、福田、森村、曽根らの作品を挙げるべきだろう。ほかに、小林孝亘、吉澤美香、堂本右美、会田誠らも出品。海外の作家ではロバート・メイプルソープバーバラ・キャスティンほか。

後期展

一方、後期展のタイトル《浮くかたち》は、小清水漸の舟形の木の彫刻の題名である。ベテランの小清水の作品の充実感はいうまでもないが、実物より相当大きい、ユーモラスなカラスの彫刻を芸術館の建物の内外に設置して造形芸術の愉快さをあらためて思い出させた間島領一、焼き切った断面の複雑なテクスチャーが鉄の造形に生命体のようなみずみずしさをもたらす青木野枝の彫刻が特に印象深かった。また、ともすると表面だけの面白さでなんの感動も与えないオブジェのような作品に傾きがちな若い中村哲也が発表した、全身を螺鈿で覆われた巨大な馬の彫刻は、美術と工芸、芸術作品とモニュメントの境界を問う重層的な意味を帯びた意欲作で、評価できる。しかし、中ハシ克シゲの、「喜怒哀楽」を表すという自身の頭頂部の写真を壁にした茶室は奇抜なだけであり、展示スペースのそこここに置かれた藤浩志のイヌの彫刻は、面白くもなんともない。
  圧巻はなんといっても、さまざまな形態の柵で四角いスペースを囲い、詩的で瞑想的な空間を創出した長沢英俊のインスタレーション。解説のためのあらゆる言葉を飲み込む、ブラックホールのような作品で、ただ敬意を表するのみである。
  ほかに、ベルリンの国会議事堂を巨大な布ですっぽり覆ったクリストとジャンヌ=クロードの仕事を紹介する写真やドローイング、川俣正蔡國強のそれぞれのプロジェクトの、やはりドキュメント類、および中原浩大、西村陽平の彫刻などを展示。

“美術の回復”を期したい90年代後半

「水戸芸術館が目撃した」ものに限られるとはいえ、前期・後期を通してこのごろの日本の現代美術を代表する何人かのアーティストの仕事を概観することができた。必ずしも新作ではなかったから、かれらの美術の今後を占うのは難しい。しかし、振り返れば、絵画のような平面であれ、彫刻やインスタレーションであれ、「あくまでも造形によって、視覚の作用を通して(読解力や音声、時間の助けを借りずに)、アーティストによるひとつの世界像を呈示する」という美術の根本の価値を真正面から追求する姿勢が、特に若い作家にあまり見られないのは、さびしいことである。これからの時代に“美術の回復”を期したい。

[ なごや さとる/美術ジャーナリスト]

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