Apr. 8, 1997 (a) Apr. 15, 1997 (a)

Column Index - Apr. 8, 1997


a)【初期トーキー映画と「語りの混濁」
 ―ウェズリー・ラグルズ監督『ボレロ』をめぐって】
 ……………………●篠儀直子

b)【サイバーカフェという公共圏
 −ヒース・バンティングとサイバーカフェ「バックスペース」】
 ……………………●毛利嘉孝


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バックスペース

所在地:
Whinchester Wharf, Clink Street, London, UK
営業時間:
12:00 〜 20:00
詳細は
http://www.
backspace.org/
timeline/
問い合わせ:
バックスペース
Tel.44 171 234 0804
Fax.44 171 403 4586
info@backspace.org
heath@cybercafe.org
*4月以降の予定は未定。興味のある人は、 「バックスペース」のサイトをチェックのこと。
http://www.irational.org/
cybercafe/backspace/

バックスペース
http://www.backspace.org/

ANTI WITH E
backspace.org lecture series
http://www.irational.
org/cybercafe/backspace/

Cyber Cafe Guide version 13.0
http://www.cyberiacafe.
net/cyberia/guide/
ccafe.htm

Welcome to Cyberia Cafe
http://www.cyberiacafe.
net/cyberia/

NTT InterCommunication Center
http://www.ntticc.or.jp/

GRENSGESHILLEN: Geert Lovink, Pit Schultz
http://www.media-gn.nl/
sgg/Lovink.html

GEERT LOVINK, PIT SCHULTZ (Neterlands / Germany)
http://www.telefonica.es/
fat/elovink.html

CTHEORY: Organized Innocence and War in the New Europe
by Geert Lovink
http://www.aec.at/
ctheory/a31-
organized_innocence.html

HyperMedia Research Centre
Theory by Richard Barbrook
http://www.hrc.wmin.ac.uk/

Memesis Critics
by Richard Barbrook
http://www.aec.at/
meme/symp/contrib/
barbro.html

CTHEORY: Global Algorithm 1.1: Hypermedia Freedom
by Richard Barbrook
http://ctheory.aec.at/
ga1.1-hyper_freedom.html

Cyberia Magazine - Wire Cutters,the bondage of freedom
by Richard Barbrook
http://magazine.cyberiacafe.
net/issue-1.1/views/
views3.html

A Preliminary Thesis Toward "The Work of Art in the Age of Cyber Technology" By Toshiya Ueno
http://www2.sva.edu/
readings/ueno.html

サイバーカフェという公共圏
−ヒース・バンティングと
サイバーカフェ「バックスペース」

●毛利嘉孝

サイバーカフェが生まれたロンドン?

サイバーカフェあるいはインターネット・カフェという形態はアメリカではなく、ロンドンで生まれた、と信じている人は少なくない。以前トッテナムコート・ロードのサイバーカフェ、「サイベリア」を取材したときもそう言われた。その後、ヒース・バンティングに会ったらその「サイベリア」のコンセプトそのものが彼のものだったと聞かされた。

ヒース・バンティングとネットワーキング

ヒース・バンティングの名前は、NTTのインターコミュニケーション・センターの招聘で来日したことがあるので覚えている人もいるかもしれない。イギリスのインターネット・カルチャーに関わっていて彼の名前を聞いたことがないのはモグリである。その一方で、実際に彼が何者なのか正確に答えられる人は少ない。アーティスト? 確かに都市とサイバースペースを舞台に落書きをしたり、ハッキングをしたりと、パフォーマンスらしきことを行なっているので、一種のアーティストと言えなくはない。アクティヴィスト? そうかもしれない。
  たとえば彼の活動はこんな具合だ。コンピュータを持っていない人、さまざまな理由で使うことができない人にもインターネットのメール・アドレスを配る。そのメール・アドレスにインターネットを通じてメールを送れば、そのメール・アドレスを持っている人の手元に、郵便物として届くような仕組みをつくる。インターネットと既存の郵便との接続はダイレクト・メールの会社に協力を仰ごうとしている(いや、ひょっとしたらハッキングしようとしてるのかもしれない?)らしい。こうした活動は、しきりに議論されているサイバースペースのHavesとHave-nots(「持つ者」と「持たざる者」)のギャップを埋める実践的な政治的活動として理解できる。
  ヒース・バンティングには、こうした活動がたくさんある。しかし、彼自身はそれがメジャーなメディアに取り上げられることを極端に警戒しているように見える。ごく最近までインターネットのメール・アドレス以外に実際の住所を持たないホームレスだった時期もあったとも伝えられる。極端な人間なのだ。しかし、このことは彼が気難しい付き合いにくい人間であることを意味しているわけではない。むしろ逆に、ヒース・バンティングは、いろいろな国のいろいろな人々と積極的に交流し、人間のネットワーク化を常にはかっている。

テムズ川南岸にできたサイバーカフェ
「バックスペース」

そのヒース・バンティングが最近ネットワーク化の拠点にしているのが、テムズ川南岸、ロンドン・ブリッジの近くにあるサイバーカフェ「バックスペース」である。普段はサイバーカフェとして営業しているこの小さなスペースでは、最近月に一度のペースで「ANTI WITH E」と題されたコンフェレンスのシリーズが行なわれている。
  コンフェレンスと言っても堅苦しいものではない。入場は無料。その代わりに参加する人は、みんなで共有できるように食べ物と飲み物を持ち寄らなければいけない。テーマは、ネット芸術、ネット宗教、ネット政治学などと大雑把に設定されているが、その場に居合わせた人は希望すれば誰でも自由にプレゼンテーションができるように開放されている。
  プレゼンテーターの中には海外から駆けつける人も少なくない。ピット・シュルツ、グラハム・ハーウッド、ピーター・ランボーン・ウィルソン、ヘアート・ロフィンク、リチャード・バーブルックなどの発表者に混ざって日本から上野俊哉の名前も見える。それ以外にも、原則的にだれでも平等に時間を与えられ発表ができる。デモクラシーの論理は徹底しているのだ。同時に、つまらないことを言えば有名無名に関わらず徹底的に攻撃される。その歯に衣を着せない議論は、お互いを思んばかって真剣な議論を回避しがちな日本では考えられない。時に発言者が暴走するのをヒース・バンティングはにやにやしながら眺めている。別に的外れの議論が何時間続こうがかまわない。だいたい、何か結論を求めようとしているわけではないのだ。
  終わった後はそこで知り合った連中がパブに飲みにでかける。中には議論をしたことで友人になったグループもある。議論は議論、個人は個人、というわけだ。

サイバーカルチャーの公共圏

ハーバーマスの有名な公共圏の議論がある。その議論にしたがえば、人々が自由な立場で政治的な議論を行なった19世紀のカフェやパブのような「公共」空間は、「近代」の政治の重要な役割を果たしてきた。近代主義者であるハーバーマスは、「今こそこうした空間が必要だ」と説くわけだが、「バックスペース」のコンフェレンスなどを見ていると、ヨーロッパのある政治運動の中に自覚的に「公共」の空間を絶えず作りだし、維持していこうという伝統がはっきりと残っていることが伝わってくる。

  彼らの議論で共通しているのは、サイバースペースを含めた「公共圏」が、国家や企業といった別の力により「私」化されていくことに反対するはっきりした態度表明である。公共空間とは国家や企業や、ましてや個々人に属している空間ではない。何か面白そうなことが起きると、すぐに国家や企業が介入し、個人は個人的な金儲けのみに奔走するという状況に何も疑念をはさまない日本のサイバー関係者は、「バックスペース」でも覗き、できれば下手な英語でもいいから発表をして、もう一度「公共」という言葉の意味を考え直すべきだと思うが、どうだろうか?

[もうり よしたか/
カルチュラル・スタディーズ]
mouri@dircon.co.uk

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 ―ウェズリー・ラグルズ監督『ボレロ』をめぐって】
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