Mar. 18, 1997 Apr. 22, 1997

Art Watch Index - Apr. 15, 1997


【《ドイツビデオアートの30年》】
 ………………●多木浩二


Art Watch Back Number Index



《ドイツビデオアートの30年》
会場:
原美術館
会期:
1997年3月15日
 〜5月18日
問い合わせ:
原美術館
Tel.03-3445-0651
Ulrike Rosenbach

ウルリケ・ ローゼンバッハ
ビデオインスタレーション
"Requiem fur eine Eiche"(detail)
1993

Ingo Gunther

インゴ・ギュンター
「無題(処刑台)」
1988/94

写真:原美術館






原美術館
http://www.haramuseum.
or.jp/

Nam Jun Paik
Fuku/Luck WWW Server Index
http://vartcom.kyushu-id.
ac.jp/Paik/index.html

Nam June Paik in the '90s
http://www.panix.com:
com80/~fluxus/FluX/
ESH.html

Gallery Guide: Artist: NJPaik
http://www.gallery-guide.
com/gg/artist/njpaik/

swatch / Artist / Nam Jun Paik
http://www.swatch.com/
artist/arindex.htm

Nam June Paik
http://www.artexhibits.com/
namjune.htm

GUGGENHEIM SOHO : MEDIASCAPE : Nam June Paik
http://www.artnetweb.com/
guggenheim/mediascape/
paik.html

Fine Art Rafael Vostell / Wolf Vostell
http://www.germangalleries.
com/Vostell/Vostell.html

Wolf Vostell
http://www.bvdg.de/
berlin/vda26wvo.htm

REFUGEE REPUBLIC / Ingo Gunther
http://refugee.net/

Ingo Gunther: Refugee Republic
http://www.v2.nl/
n5m/people/
guenther_rr.html

Ingo Gunther
The United Multicultural City Sates of the World
http://www.ntticc.or.jp/
pub/ic_mag/ic000/
gunther/gunther_j.html

インゴ・ギュンター展《難民共和国》at P3 art and environment
Art Watch - Oct. 22, 1996

ARTIFICES 4 - Galerie / Jeffrey Shaw - Biographie
http://www.labart.
univ-paris8.fr/Art-04/
Galerie/Shaw/bio.html

Who is Jeffrey Shaw?
http://www.mediamatic.nl/
WhoisWho/Shaw/
JeffreyShaw.html

GUGGENHEIM SOHO : MEDIASCAPE : Jeffrey Shaw
http://www.artnetweb.com/
artnetweb/guggenheim/
mediascape/shaw.html

Ulrike Rosenbach
http://www.artgentur.de/
rosenbach/

Exhibitions - Ulrike Rosenbach
http://www.kah-bonn.de/
1/13/0e.htm

ULRIKE ROSENBACH: OSHO SAMADHI
http://www.235media.com/
video_art_edition-eng/
ULRIKE_ROSENBACH.html

《ドイツビデオアートの30年》

●多木浩二



ビテオを一部に写すインスタレーション

ビデオアートと言ってもビデオの映像だけで芸術作品をつくるのではない。ここでいうビデオアートはビデオ(ビデオが未発達の初期にはフィルム、テレビなどを使った)を取り込んで作られた立体作品というべきであろう。動く映像を一部に含んだインスタレーションである。いろいろなメディアが異様に発達し、ときにはそこに淫することがオタクに見えるような世界にあって、芸術は発達したテクノロジーに影響されるのではなく、あえていえばテクノロジーに先駆け、テクノロジーの浸透した世界にあって意味の可能性を問うのがビデオアートである。
  この種の芸術がドイツでもっとも早くから発展したことは不思議ではない。振り返ってみると、ドイツには20年代にすでにキネティック・アートを生みだして、光と運動、さらにあたらしい素材を使った先駆的な芸術の歴史があった。第二次大戦後も、一見地味なように見えるドイツは、こうした伝統の水脈をあたらしい場面において引き継ぎながら、芸術が作りうるあたらしい意味を模索してきたし、パフォーマンス、概念的な芸術などが探求されることと同じ基盤に立脚していた。そこにはビデオアートの草分けであるナム・ジュン・パイクのようなドイツ人でない芸術家が初期から加わっていたし、ヴォルフ・フォステルのようにドイツ人の芸術家でいち早くアメリカで発表した作家もいた。東京品川の原美術館で催されている《ドイツビデオアートの30年》は、1994年にドイツで組織された展覧会で、以来、世界中を巡回しているが、ドイツのビデオアートが、どのようにシリアスに営まれてきたか過程を振り返り、現状をほぼ見通せるという意味で一見の価値がある。

物語性と相互作用

おおざっぱに言うと、ここに展示されているビデオアートには、一種の物語性をビデオや装置によって作りだす傾向と、観客を作品の内部に取り込み、装置がそれに反応し、観客も装置からなんらかの経験をする傾向とがある。コンピューターを駆使して老若の女性の身体の蜘蛛への変身を扱ったフランツィスカ・メーゲルトの作品はギリシャ神話のアラクネを想起させるし、牧歌的な穏やかささえ感じさせる風車のような構成物と棒を振りまわすパフォーマーのビデオを組み合わせたジャン=フランソワ・ギトンの作品は、ドン・キホーテを現代に読みかえている。これらが物語性の例である。台に横たわって頭を穴に差し込むと、頭上にあるモニターが見えるが、ほとんど一瞬しか映像が現れないインゴ・ギュンターの装置、あるいは歩いていくと映像が変わるジェフリー・ショウの作品などは、観客にある経験をさせるタイプの作品である。どちらの場合も、ドイツの作品に共通しているのは、これ見よがしの極端な技術の提示に終るのではではなく、なんらかの意味で存在論的あるいは認識論的な問いかけをすることであろう。もちろんあまりにも日常化したビデオを使うビデオアートにはいつでも通俗化する危険がある。ビデオアートが、あたらしいメディアを使っても決してきわものに堕することなく、現代の芸術としての可能性をどのようにもっているか、それを考察する上でも適切な展覧会ということができよう。

[たき こうじ/美術批評家]

toBottom toTop



Art Watch Back Number Index

Mar. 18, 1997 Apr. 22, 1997


[home]/[Art Information]/[Column]


Copyright (c) Dai Nippon Printing Co., Ltd. 1997
Network Museum & Magazine Project / nmp@nt.cio.dnp.co.jp